夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
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「白が降りしきる深夜 3」テミン セフン SHINeeの短編 EXOの短編


車内の沈黙は仕事に必要なそれ以外、帰宅時間まで続いた。からかってこないどころか、何かこちらが気に障ることでもしたような相手の態度に、セフンはあることないこと考え、「お疲れ」と一声かけて来るだけでデスクからドアに向かう後ろ姿を呆然と眺めた。
あの雨宿りをした短時間に何の気持ちの変化だと、白い肌の柔らかい表情でいつも余裕げにふるまう人間が見せたはじめての拒絶にも見えた。それか気もそぞろと言うか。自分以外のことでそうなっているのならその相手に嫉妬でもしたいような心持ちだが、原因が自分なら、まるで非を感じたそぶりだ。
捕まえて聞き出したいが、そんな関係なら、もっとどうにかなっている。
ブラック企業とまでは言わないが、安月給のサラリーマン二人で、恋愛くらいしか毎日に興味を見出せない、自分はそうだが相手は違うのか、などと予測のつかない恋愛例にどんどんと子供じみた勝手なことを考えつき、何もかも投げ出したくなるが、相手に幻滅したわけでもない恋心はそう簡単に制御できない。
同じ終了時間で、一緒に社を出れば良いものを置いて行かれて、取引先から戻ったのも遅く、自分達が一番最後まで残ったのに、ロボットでも解体されたみたいな灰色のデスクが並ぶフロアーに一人残された――さめざめとセフンは、ビジネスバッグを抱えて室内を眺め、細いスーツの後ろ姿を追い払うように頭を振る。
もう女相手に精を吐き出して、憂さ晴らしでもしたい気になったが、携帯電話に並ぶ連絡先は気が付けば、あの男に懸想し出してから殆ど利用していない。自分に興味なく振る舞っていても、本心ではないと言うのはすぐに分かるもので、連絡先に並ぶ女の友人達はみんなそれだったが、本命にするほどではない彼女達に手を出すことは今まで皆無だった。それはこちらに恋人が切れなかったからだが、情事後の付き合う付き合わないのアフターケアも完全に放棄し、今はどんな酷いことも出来そうだと苛立ちを覚えている。
片っ端からホテルに連れ込んで、もしくは彼女達の部屋で、酔えばボディータッチを繰り返す女の友人など一人もいなくなっても良いと、処理の対象にする性別にも迷いが生じているせいで、最近溜め込んでしまっているものが熱を持ちだしたみたいだった。だが、こんな時にも、その相手がもし、少し前に自分をここに置き去りにした人間だったらと思うと、不思議な事に熱はおさまり、寂しさだけが頭の片隅に残った。
知らないうちに拡がった恋心の大きさにセフンは期待と同じだけの虚しさを抱いている。ただのハッピーエンドはきっとどこにもない。完全な同性愛者ではないから、よりそう思うのだろうとセフンは、では彼はどう思うかと、もう一度灰色のスーツの後ろ姿を硝子張りの壁の向こうに見た。外はまた降り出している。今度は長くなりそうだった。そして、横目に盗み見た丸い目が夕立を追って、灰色のスーツの腕が伝えてきた熱さを思い出し、それにいぶされたみたいに、今無性に追いかけ、答えを聞き出すのにかこつけて、この寂しさを埋めたくなった。





つづく



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