夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「打ち上げ花火見ながら恋と冷やし中華始めました 1」ベッキョン ユノ チャンミン カイ ヨンファ ジョンヒョン(CNBLUE) EXOの短編 東方神起の短編


物心ついた時から、自分は何か違うと思っていた。
いや、結構違った。
例えば。
「ベッキョン。良かったな。弁当作ってもらって」
「うん、楽しみだよ」
これは、俺の父親。いつもは給食だけど、今日は課外研修で隣町へ全員バスで移動し一日そこで過ごすから弁当だった。
父さんは、いい男だと思う。厳しいけど、頼りになるし、ぎょろっと睨むように人を見るのはやめた方がいいと思うけど、顏は格好良い。
オールバックにしている額は年の割には肌が光って綺麗だ。髪が少なくなってきたと気にしてるけど、俺はそんなに思わない。おっさんでも厚い唇も赤くて、若く見える。
だが、仕事が出来るのが一番良いところだ。海外ばかり行ってあんまり話せないけど、かなり尊敬してる。
それから俺は台所に振り返った。
「ありがとう。ジョンヒョン父さん」
「うん、残さず食べてよ」
そして、これも俺の父親。エプロンをして毎日家事をする父親。家族で一番背が高い。色も白く、切れ長の目は吸い込まれそうな変わった目だけど、昔はすごく美少年だった。
と、もう一人の父さんが言う。
その父さんは食べ終わって、リビングのソファーで新聞を読んでいたけど、ばさっと前のテーブルに無造作に置いた。
「俺のもあるよな?」
「え?」
ジョンヒョン父さんは言われて、堀の深い目元を困ったように動かすもう一人の父さん。
「いるの?さっき会合って言ったじゃん」
「残りとかあるだろ」
ソファーから立ちあがって、こちらに来た。俺は朝飯の白米と魚の辛い煮つけを口に入れながら、豚のスープをスプーンですくって静かに食す。
「ちょっとはあるけど、そんなに出来ないよ。もう時間だろ」
「あるので良いから詰めろよ」
「分かったから。待ってよ」
台所で、押し問答をしているスーツとエプロンの父親二人を横目に見ながら、俺は慣れた光景に、何も言わずさっさと食べる。
これが俺の家族。
ちゅ。
最後の一口を頬張り、水を飲み干してから、ちゅっちゅっちゅっちゅ音がし出した台所に向かって、
「ヨンファ父さん、7時半」
と立って、俺は食器をまとめた。
「詰めないと」
「ベッキョンのもらう」
「あげないって。どいてくれ父さん」
白い顔を染めて、しっかり抱きしめられた腕を解こうと身体を捻っている父さんを助けるように、食器を持って俺は二人の後ろに立った。
しかし、ジョンヒョン父さんごと持ち上げるようにして、抱えたまま移動させられた。
俺は流しに全部置き、「弁当はあげないよ」ともう一度呟いて、そこを出る。
歯を磨いたり、制服に着替えたりして、通り過ぎるたびに、
「……触ったら……だめだ……って……あ」
台所から廊下に切羽詰まった声が聞こえるが、
「いれるなってっ……あっ」
俺は淡々と用意を済ませていた。そろそろそうなるだろうと思ってたし。ここ最近ずっと海外だったからな。
「あっ……あっ……」
声の聞こえない父さんは遅刻かどうにかするだろう。
「あぁっ」
「行ってきまーす」
最後に父親の一際大きい声を聞いて、俺は眩しい外に出た。
「よっす」
「よす」
「乗れよ」
「おいす」
茶髪に染めたばかりのユノが笑った。切れ長の小さな目に、瞳は普通くらいで笑うと細い目の中が真黒になる。
「んだそれ」
リュックを背負いながら、後ろにまたがる俺に振り向き、下唇の厚い口で返事が可笑しかったらしく呟かれた。
「良いから行こうぜ、出発」
その白いシャツの肩に手を置き、立って乗った。
見下ろすと、高校に上がると同時にあけられた耳たぶの穴に今日も透明なファーストピアスが刺さってある。
「コンビニな」
「コンビニーっ」
いつもの交代場所を出発の合図のように叫んだ俺の声と共に、玄関前に丁度到着していたユノの少し錆び付いた自転車が動き出す。
物心ついた時から、何か違うと思っていたのは、とんでもなく違った俺の家族もだけど、俺自身も。
生まれた時には親がいなかったこととか、男二人の子供になって、限りなく、自分もその傾向が出て来たこととか。
この国で同性愛者の家族など、石でも投げられそうなものだけど、事実そんなことは多々あったが、でも俺がもっとも違ったのは、物心ついた時から、自分とうり二つの境遇のこいつがいたことだ。
結婚式も一緒に挙げるかもしれなかったくらい仲が良かった男同士の二組のカップルが、同じ年の子供を貰って来た。
施設は違うが、何もかも似た境遇に、俺達は世界中が敵になっても、家族を守って一緒にいよう、などと赤面するようなことを子供の時に誓いあったりした。
俺の両親は昔からあんな感じで、子供の時には必死で隠してくれていたが、忙しさなどで間があいたら頭が沸くらしく、声が聞こえて来たり、一瞬遭遇してしまったり、もう最近は、俺を大人とみなして、やりたい放題で。あんなに長い間同じ人間と仲良きことは美しいが、すっかり俺は毒された。
初の自身でした気持ち良いことは遭遇してしまった両親の痴態が興奮材料だったから救われない。
成長過程で刷り込まれるのは良くあることらしく、小学校ではじめて自分の対象が同性だと打ち明けた相手もそうだと言われて、本当に安心した。
それにもっと子供の時に、一緒に誓いあった奴が同じ嗜好なんて。ならもう勝ちも同然だろう。
こんな不利な条件下で俺達は相手が目の前にいるようなものなのだ。自分達がそうなれば、何もかも上手く行くなと。
きっと、ユノもそう考えていただろう。
まさか、人には好きなタイプというものがあって、運命のような相手が全くそれに一致しなくなるなんて、俺達は想像もしなかった。
「なあ、チャンミンて、弁当誰と食うと思う?」
「女と食うんじゃねーの」
「ころすー」
高校に上がった俺達のはじめての夏。ユノは四回目の恋をした。
中学の時、俺の反対を押し切って、三回目の恋でこの親友は同性に告白をした。その時に、同じ嗜好ではない人間を好きになると、どれだけ傷つくか俺は親友で見せられた。
そして、世の中は同性を好きにならない人間が殆どで、自分達は変わっているのだと。
恋で幸せになることがどれだけ難しいか。
俺はそれまでも告白なんてしたことないが、あれから男と言うものを見ないようにもしてきた。
どうせ辛い思いをするなら、最初からいないものとした。
でもユノは、あれだけ辛かったことも忘れたのかあっさりとまた恋をした。
隣のクラスの学年首位に。持病持ちで学校を休んでばかりだが、期末テストの結果は、俺と一緒に貼り出された。十位までが発表され、こちらは四位だったが、ユノの好きな相手は一位だ。顔も大きな目が可愛らしくて、人気もある。
あんなの絶対だめだろと俺は思うけど、ユノは高い背にしては大分小さな頭が、あいつでもういっぱいだ。
でも髪も染め、ピアスもして、こじんまりと整った顔は、女子に人気があったりする、そんな男が毎日赤い顔で照れながらあのシム・チャンミンの話をしている姿はなんか面白くて、羨ましくもあった。
俺たちは、涙が出そうなほど幸せな、成功例を一番身近に見ているから。
好きな人間を作らないと、その幸せは永遠にやっては来ない。
いや、それがもしダメだったとしても、ユノは今すごく楽しそうで。好きになるって言うのはそれだけで良いのだろうか。
「そう言えばチャンミンのクラスに転校生来るんだよ」
「まじ。いつ」
「今日」
「まじ」
街路樹の緑に挟まれた坂道をユノが脚を上げて下りる、ぴかぴかと光る緑の間からうるさい蝉の声がどこまでもついてくる。白い雲が浮かぶ真っ青な空には暑さからか、鳥も飛んでいない。日焼けした小学生たちを追い越して、あと数日で夏休みが来る俺達に、道路で熱された風があたる。
「やべやべ!おいっ」
あははと目を細くして八重歯を見せて笑うユノの肩に掴まると、揃いの白い半そでシャツに風が通って行く。
「家が中華屋なんだよ」
「なんでそんなに知ってんだよ」
スピードのついた自分達を全く気にせず通行人は暑そうな顔で遠ざかっていく。下に拡がる街並みは太陽で眩しい夏模様だ。
「昨日オープンで行った」
「運命じゃん」
「運命の相手はチャンミンー」
「ユノっまじ死ぬぞ」
こんな俺達にもどうやら運命の相手は複数いるらしい。
一人目の運命の相手をだめにした俺達だけど、次の恋はどうだろう。
両想いは程遠いかもしれないけど、数打てば当たるっていうのにかけるのもありかも。
スイカとかアイスとか花火とか。
一緒に楽しむだけでも良いな、夏だし。





つづく



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