「夢の続き37」ユノ×チャンミン
顔をさすって、部屋に入ると、案の定料理は作られていない。
でも流しの横に俺が教えたスーパーのビニール袋と、こたつの上にユノが買ったと思われる料理本があった。
本の表紙を見ながら、俺の後ろについてきたユノに聞く。
「何を作る気ですか?」
ダウンジャケットを脱いで、リュックを置く。
「インスタントラーメン!!」
満面の笑みで答えてすぐに台所に踵を返すユノに、じゃあ、「ごちそうさまがききたくて」買わなくていーじゃんと思いながら、心配でついていく。
その着ているエプロンも買ったのか。
「あ、大丈夫!俺一人で作れるよ!」
「いや、見てます」
「あ、そう?」
そう言って、ビニール袋から、インスタントラーメンを取り出す。食べたことない味のだった。
あんなのあったのか。
「卵も買ったから、いれる」
とはにかんで言うユノを見ながら、台所と居間を区切る柱にもたれかかった。
楽しそうにユノはラーメンを作っていく。
コンビニでも思ったけど、この人、はじめてすることもそんなに難しそうにしないな。
「あの、ユノさん」
「なに?」
麺を茹でながら菜箸を持ったユノが、俺に振り向く。
「できれば野菜とか次からあるとありがたいです」
「あ!今日もあるよ!そのまま食べれるの買って来たから、一緒に食べよう」
「何買って来たんですか?」
「トマト……?みたいなの買って来た」
「じゃあ、そのトマトみたいなのは俺が切ります」
柱から体を起こすと、ユノが慌てて制止する。
「ダメダメ!俺がするの!」
そう言われて、またもたれかかった俺の前で、
ユノは冷蔵庫から二個入りのパックのトマトを取りだした。
そこから一個取り出すと、
掴んだまま目を丸くして俺に向いた。
「……これ、すごいね」
「ですね」
と微笑んで答えた俺に頷いて言う。
「なんか切るの勿体ないね?」
「でも切って下さい」
微笑んだまま即答した俺の前で、恐ろしく慎重にユノはそれを切った。
いただきます、と二人同時に言って、すぐに箸を持って一口食べた俺と反対に、ユノは手もつけずにわくわくした目で見てくる。
気にせず、食べていたものの、視線に耐えられずに言う。
「半端なく伸びてますけど、美味しいですから、早く食べて下さい」
嬉しそうにこたつ布団で顔を隠したユノは置いといて、今日の昼、自分もカップ麺にしなくて良かったと思った。
料理を食べ終え、二人ともシャワーも済ませ歯も磨き終わると、昨日もそうだったけれど、まだそんなに遅くないのに、ユノは眠そうだった。
「チャンミン、電気つけてて大丈夫だから」
と言ってベッドに入る。
「俺も寝ます」
明日は二限からだし、朝早めに出て学校で課題を済ませることにする。
自分もここ最近のイベントの多さに疲労がすごい。
電気を消して、壁側のユノに距離をとってベッドに入る。
「ねえ、チャンミン」
「はい」
月明かりで、目を閉じているユノの顔が見えてくる。
「クリスマスが近いね」
「そうですね」
「ねえ、チャンミン」
もうユノはほとんど寝かかっている。
「はい」
「トマトっていつもあんな味するの?」
「……大体は」
俺が答えると、ユノは寝た。
一つ、気づいたことがある。
もう熱は下がってるはずだけど、ユノは多分、元から体温が少し高い。
寒い冬の部屋の中でも布団の中は温かくて、俺もすぐに眠ってしまった。
只今21時39分(ユノの退役まで484日)