「夢の続き58」ユノ×チャンミン
俺は研いだ米をセットしていた。こういうのは米を炊き忘れるという王道パターンがあるから、注意しないといけないんだ。
「おい、チャンミン」
玉ねぎのみじん切りの工程をなんとか終えたあと、それを炒めはじめたキュヒョンに呼ばれて振り返った。
手を止めて、俺達の間にいるユノを唖然と見ている。
「リーダー寝てるぞ」
時計を見る。十時半過ぎか。
後ろで椅子に座っているユノの顔を覗き込みにいく。
……じゃがいもを持ったまま寝ている。
いつ切り終えるのか全く時間が読めず、椅子まで設置して、切ってもらっていたけど。
「ユノさん、起きて下さい。あと俺しますから」
みじん切りの後遺症で鼻ちょうちんを膨らませている。
「ユノさん」
「あ、うん、大丈夫」
ユノが起きて目をこすった。
「俺しますから。寝てて下さい。危ないから」
「大丈夫……やれる」
ユノがむにゃむにゃと答えた。
単に野菜を切りたいのか。チゲの印象が強くて、俺が料理下手だと思われているのか。
「ユノさん。俺、チゲは焦がしましたけど、結構料理できるんで、ちゃんと野菜切りますよ?」
「……知ってる。チャンミンは……料理うまいよ。知ってる」
手を止めていたキュヒョンが、また炒め始めた。
「じゃあ、任せて。ほら、立って。出来たら起こしますから」
本当に目蓋が開けられないようで、目をこすりながら、納得いかない顔で頷いてユノが立ち上がる。
そして、俺達に言った。
「じゃあ……美味しいカレー……できるの待ってるね」
「はいはい、ベッド行って」
ユノはベッドですやすやと寝出した。
野菜を切り始めた俺にキュヒョンが手を動かしながら、遠い目をして言った。
「どうやら俺は今、趣旨が変わった、という体験をはじめてしている」
「飴色になったか?」
「全然ならない」
遠い目のまま言った。
「酒でも買ってくれば良かったかな」
「そんなことしたら俺達も寝るぞ。それより、チャンミン、音楽でも流さないか?」
「ユノさん、寝てるしな。映画とかの方が良くない?」
「なんかあるの?」
「それが、ない。俺借りちゃうから。あ、でも前の住人が押し入れに置いていったアダルトビデオっぽいDVDあるよ。怪しすぎて見てないけど」
「この状況でアダルトビデオ見て何が楽しいのか俺に説明してくれ、チャンミン」
それに見れないし、音楽よりうるさそうだしな。
「野菜切り終わったぞ。そっちはどう?」
「飴色ではないな。もしかして玉ねぎは飴色にならないんじゃないのか?」
「どれどれ?あ、本当だ。火弱かったかな」
「しかも、チャンミン。ここでお伝えしたいことがあります」
キュヒョンの顔を見た。
「どうやら俺は今、玉ねぎを飴色にしている最中に終電を逃した、という体験をはじめてしている」
キュヒョンの目がまた遠くなった。
只今23時25分(ユノの退役まで464日)