「PLAY23」ユノ×チャンミン
チャンミンが一息ついて、視線を泳がせる。
「いや、今更なのは自分のせいです。俺はやっぱり前に進んでなかったんだ。ごめんなさい、ヒョン。怒鳴って」
俺は首を横に振った。その俺を視界に入れながら、チャンミンの視線は泳いだままだ。
「打ち合わせまで、ちょっと時間が欲しいんで、もう出て行って下さい。俺は今まで通りに戻れますから」
その大きな目が、震えているのを俺はただ心配で見守る。
動かない俺を面倒くさそうに見て、溜息をつく。
「あの……キスは。本当に悪条件が重なっただけです。魔がさしたんです。あんなこと今までなかったでしょう?最初で最後だから、安心して」
自嘲気味に笑うのを見つめたまま、俺は何も言わずに立っていた。放っておけなかった。
「チャンミン」
「出てけって言ってるでしょ」
うんざりしたように吐き捨てて、視線を床に戻される。
「俺はお前の望む意味で傍にいてやれないかもしれないけど、ずっと傍にいる。
今だって傍にいることは出来るよ」
「すいません。今は俺の望む意味でしか傍にいて欲しくないから出て行ってください」
床から視線をそらさずに言ったチャンミンを置いて、
それを聞いた俺はどうすることも出来ず、
踵を返した。
ドアに向けて二、三歩歩いてから、また振り返る。訝し気な顔をしたチャンミンと目が合って、チャンミンは俺を見ていたことも分かった。
「なあ、チャンミン」
「……はい」
「やっぱり、俺が最初に聞いたことが分からないんだ」
チャンミンが目を細めて黙った。
「俺が彼女が出来ると」
「分かってます」
ここまでの会話を俺が予想していたことを認識したようで、チャンミンが苦笑する。更に傷つけるんじゃないかと思いながらも、俺はどうしても気になって、恐る恐る言った。
「もし……俺なら、そういう人がいるのに、相手に恋人ができたからって、
違う人と付き合ったり、別れたり……しないけど」
チャンミンが鼻で笑った。
それに俺はちょっと口を尖らせた。
その俺を見て、またソファーにもたれると、
今度は優しい顔で、チャンミンは微笑んだ。
「本当に分からないんだとすれば、
ヒョンは変わらないですね。
それは俺にとっては理想論です。俺だって、寂しくなるんです。ヒョンとは違う寂しさみたいですけど。
体の関係だって欲しくなるし。彼女たちと付き合ってる時は恋愛感情もあった。
でもいつも、同じ衝動が沸き起こるんです。
誰かさんが別れた時……自分も今フリーになれば、チャンスがあるかもって」
眉をひそめた俺を見て、にやりと笑って視線をまた自分の足元にうつした。
「結構下衆なんですよ、俺は。想いの大きさの違いと言うか、彼女達のとはもう完全に別格だったので。それに……」
懐かしいものでも眺めるように足元に目を向けたまま、一呼吸置かれる。
「もし、これを続けたら、
俺が好きな事が、いつか調度良く、自然な感じで伝わるかもしれない
って思ったんです」
つづく