「PLAY26」ユノ×チャンミン
確かに一時間半後、チャンミンは体調からきている浮腫みくらいの印象まで、その腫れを引かせて移動車に乗り込んだ。
睡眠不足なのもあるようで、車内では熟睡していた。
窓枠に肘をつけて頭を支えながら、隣のあどけない寝顔を見る。
俺の頭の中は昨晩から次々にクエスチョンが生まれて、今はその寝顔に吸い込まれていくようだった。
ぼうっとそれを見ていると、会場についた。
チャンミンが起きる。
そして、その視界には俺がいる。
そりゃあ、普段見ている側が見られていたら驚くかもな。
チャンミンはぎょっとした顔をして気持ち悪そうに、目をそらさなかった俺を見る。
俺はまた小さく鼻から息を吐いて、ドアを開けて車を降りた。
新しい会場でも大まかな進行は変わることなく、問題なく進んでいく。
自分達のソロのリハーサルになって、先に終えた俺は、観客席の最前列に座って、立ち位置を決めるチャンミンの様子を眺めていた。
合間にも書くように言われていた、ファンに投げるサインボールを片手にもって意味もなく、握ったり、軽く上に投げてみたりしている。
サインペンと、まだいくつかボールも一緒に持って来ていたけど、それは全部書いてしまった。
立ち位置と照明が決まったようで、俺は脚を組んで、投げるのをやめて片手に持ったまま、それを眺める。
チャンミンはソロ曲は踊らない。
昔は、レッスン量の差で動きに差が出て、俺が良く振り付けを教えていたけど、最近はそんなこともなくなった。
チャンミンはもう、俺よりダンスの切れが良い時だってある。
でもソロは俺が踊ることもあって、踊らない。
本人も昔のコンプレックスが強いのと、元から高音パートで比較的動きが少ないことが多かったこともあって、あんなに上手くなっているのに好んでは踊らない。
でもダンスも、歌も、本当に上手くなった。
それは自分達がはじまった時からだけれど、
チャンミンは誰にでも誇れる俺のパートナーだ。
それは年数を増すごとにそう思う。一番近くで、ずっと一緒にいたのに。
そのパートナーは今日は空元気さえない。
さっきから、必要最低限の言葉しか発していない。俺は穴があくほど見つめている。
同時に俺の頭の中には駆け巡っている。
なんで?
どこで?
俺があの偶然のような「必然」で、遡れる過去はかなり前だ。でも本当にそんな昔からか?
つづく