「PLAY27」ユノ×チャンミン
あの変な遊びをし出したのはいつからだ。
あれはここ日本で流行り出して、チャンミンがやり始めたのは年明けがはじまりだったような気がする
でもなんで突然あんなことし始めたんだろう。
酒に酔った俺のことが心配で見に来ていたのは多分もっと前からだ。
それは恋愛感情が入ってなかった頃からだったかもしれないし、あの反応は……入ってからだったかもしれないけど。
チャンミンはあの「壁ドン」をやり始めた辺りから俺に気持ちに気付いて欲しくなったのだろうか。
手に持っていたボールを思わず、軽く一回上に投げる。
すると、この距離にも関わらずチャンミンが俺を見た。
すぐに視線をそらせたパートナーの曲が流れだす。俺は気まずさに顔を背けながら、ボールを隣に置いた。
昔を思い出していく。
違う。
もっと前からだ。
壁ドンより前は分からない。
でも俺が気づかなかっただけで、
あの年下の、可愛い弟のような存在で、仕事上のパートナーは、
手を変え品を変え、
俺にずっと「遊び」を仕掛けてきていたんだ。
偶然を装った必然と一緒に、
彼が言った通り、いつか調度良く、自然に俺に気付かれるように。
それは実にあの慎重な弟らしい、ささやかで、ひねくれた手がかりだ。
それをもう何年あいつは俺に出し続けていたのだろう。
健気と言うかいじらしいと言うか何と言うか、思わず赤くなってしまった自分の顔を隠すように、片手で口元を押さえた。
あいつは一番のパートナーだ。
もしどちらかが女なら、付き合っていたかもしれない。
過去に付き合って来たすべての恋人たち。
アイドルの俺に理想を抱き過ぎていたことや、俺が理想を抱き過ぎていたこと、
常に仕事優先させる俺の態度に愛想つかされたこと、
まあその殆どは会う時間のなさだったけれど、
それらのうまくいかなかった原因をチャンミンなら余裕で解決してしまう。
ただ、どちらも男ってことだ。
これに尽きる。
でもそれらの原因を解決できる相手は恐らくこのパートナー以外ない。
もしかしたら、それを俺より先に、チャンミンは気づいたのかもしれない。
でも同性の壁は厚い。
じゃあ俺が異性に求めるものはなんだ。
結婚と子供?後ろ指さされないまっとうな未来?
肝心なその異性とは今のところうまくいかないのに?
ずっと一緒に戦って来たパートナーにあんなつらそうな顔させてまでもそれは重要だろうか。
確定されてもいない、絵に描いた餅のような未来を手に入れるために払う犠牲にしてはチャンミンの存在を俺は大きすぎると思うか、どうだろうか。
それ以前に、可愛いとはいえ、女のそれとは違う意味だ。どこをどう見たって男に見えるものを、自分は好きになれたりするのだろうか。
でもチャンミンは好きになった。この俺を。
いや、確かにそれはできないことはないことを、俺も今、何となく身をもって知っている。
僅かな可能性だけれど。
それは、あの変な遊びで起きていた、つり橋効果にも似た、自分の心臓の高鳴りだ。
俺は驚かされるのが苦手で、弱い。
あれが何の高鳴りなのか自分でも判別できなくなっている。
もしかしたら、すでにすり替わっているかもしれない。
チャンミンが俺に抱いているような感情に。
それにあのキスに、俺は嫌悪感を抱かなかった。
すり替わっているから、抱かなかったのかもしれない。
その可能性にかけてみる価値は
チャンミンにはある。
結婚や、子供、後ろ指のさされない未来がなくなるかもしれない。
でもやっぱり俺には、
この仕事を最優先させる俺には、
チャンミンの存在は大きい。
タイミングは悪くなかった。
というよりも俺の時間はもう残されていない。
このツアーが特別な理由は、
このツアーで事実上、自分達は二年ほどの活動休止期間に入るからだ。
お互いにもほぼ会えなくなるだろう。
俺に続いて、チャンミンも公役に入る。
今更だと言った、前に進もうとしているパートナーには悪いけれど、
もしかしたら自分の方が、
一層チャンミンでないといけない必要性を感じ始めて来た今、
このタイミングでしかなかったと、俺は思うようになった。
つづく