夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「グラウンドゼロレクイエム1」ユノ×チャンミン EXO

これはフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
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20XX年11月6日 
P.M.18:32 



曲が流れているのに、ステージ上のアイドルが、それが耳に入らなくなることはない。
そんなこと常識だろ?
カイは思った。
自分のダンスが卓越していることは分かっている。
だからメンバーの中で、誰よりも音楽に乗りたいと思っている。
それが使命だとも思っている。
でも、今、自分はどんなメロディーも耳に入らなかった。
自分の周りでもメンバーが立ち尽くしている。


音楽は確かに流れているのに。




「ねえ、あれ、噛まれてない?」




誰かが言った。
その瞬間、まるで矮小な噴水でも上がったみたいだ。


深紅の水柱が、スローモーションのように、



ドームの床に飛び散った。






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11月5日 
P.M.20:24




チエコは、硝子窓に向かって、唇を突き出した。
外は夜だ。
硝子窓は反射した蛍光灯の照明でチエコを映している。
片手に握られた深紅の口紅で、たった今その唇は塗られたばかりだった。


今日はホテルに泊まるだけだ。
でも自分の中では、とてもお洒落に着飾っていた。
二つ理由があった。



一つは、





――東京に来たこと。





もう一つは、




――その地に憧れのアイドルが来ていること。




チエコは座席の備え付けのテーブルに、サンドウィッチとペットボトルと一緒に置かれた携帯電話を手に取った。
ここには愛しの「彼」がオリジナルでプリントされていた。
チエコには、付き合っている彼氏がいた。
でもこの「彼」との付き合いはもっと長いのだ。
思わず、口元が弛む。
ここにプリントされた写真は、一番のお気に入りのもの。



チャンミン。



チエコはまるで呪い文句のようにその名前を唱える。
早く会えますように。


顔を上げると、車両入り口のLED文字広告にニュースが流れている。


どこかで小さな地震があったようだ。
でもその震度なら問題ない。
ただ、自分の住む岡山と違って、東京は地震が多い。
最近は大災害を脅かすようなテレビ番組は少なくなった。
でもいつ来るか分からない。
それを考えると、今から向かう東京に、
浮足立ったチエコの心に少しばかりの陰を落とした。



『只今小田原駅を時刻通りに通過しました。あと14分で新横浜駅です』










11月6日
A.M.0:14



身体が強張った。
心蔵がどくんと波打つ。
ベッドの上で、シム・チャンミンはそれを感じていた。
もう最初の揺れで分かるようになっている。
日本滞在歴の多さはアイドルの中では伊達じゃない。
しかもここ東京は、日本でも有数の活断層の集合地帯だ。
今の揺れは大きかった。
余震もきている。


でも大丈夫だ。
まだ速い鼓動をおさめるようにそっと息を吐いた。
携帯電話が点滅している。
起き上がって、ベッド脇に手を伸ばした。
充電器を外すと、暗い画面に光がともった。
メッセージが入っている。
後輩からだった。


『今地震がありましたが、大丈夫でしょうか?」


後輩のアイドルグループのリーダーからだった。
普段から、仲良くしているのに加え、
明日、自分は彼らのライブに行く。


「大丈夫でしょうか?」と言うのはチャンミンだけのことじゃない。


チャンミンも含め、自分達は、
この都市は、
大丈夫でしょうか?


という意味だ。


まだ日本に来る機会が少ない彼らは、地震に慣れていない。
チャンミンは、自分の心臓の音もまだおさまっていないのもさておき、


『大丈夫だから早く寝ろ』


と打って、送った。


伸ばしている前髪を掻き上げて、そこで手を止めた。


もう一人、メッセージを送りたい人間が頭中をかすめた。
でも、その人間はもう寝ているだろう。
今から、約半年前は、この部屋の隣、ここ東京の宿舎にいた。


けれど今はいない。


普段は考えないようにしている。
でも夜中にこうやって起きると、思い出して時々息が出来なくなる時がある。
自分達の国の法律に基づいて行ってしまった、二人だけの自分達のグループの、たった一人のパートナーだ。
自分ももうすぐだった。
その前にチャンミンは、まだ一人で活動を続けなければいけない。
およそ二年の活動休止期間に陥る前に、
少しでも名前を残さなければいけなかった。
明日、後輩のライブを見に行くのもそれが大きい。



――東京ドーム。



半年前は自分達がそこでしていた。



考えるな。



チャンミンは携帯電話をまた充電器に接続して、横になった。




彼が、
自分達が、
また再開した時、




俺は彼に、伝えたいことがある。






だから地震は、今、チャンミンにとってはとても怖かった。










つづく

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