夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「ジル・ド・レの住んだ町1」ユノ シウォン チャンミン キュヒョン

*ユノの相手がチャンミンではない可能性がございます。
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時は19世紀初頭。



これは二人の、とても仲の良い青年達が住む、小さな町に起きた物語。





フランス革命後、アンシャンレジームと言われる旧体制が崩壊し、古い封建制度が撤廃された。
聖職者、貴族、農民、市民はその活動領域を曖昧にし、旧制度で分けられていた身分の違う者同士が、交流する場も増える。


そんな中、彼らは出会った。


けれどもし、旧体制が存続していた世の中でも、
出会ってしまえば彼らはきっと仲良くなったのだ。


雪解け水が野山を伝っていく。
そろそろこの町でも、長かった冬が終わりを迎えようとしている頃である。



木枠に手をついて、シム・チャンミンは窓の外を見つめていた。
昼過ぎから小雨が降ったせいで、もう外は日が暮れようとしている。
雨は上がったものの、太陽は最後まで顔を出さなかった。
チャンミンの視線は下を向いている。
もう殆どが夜、の景色を見つめて、その少し横幅のある口の角を上げていた。
同じ目の位置にあるのは背の高いマロニエの木だけだけれど、もう葉が落ちてしまっている。
そして、その日暮れに間に合うように、一人の男がこちらに走って来るのが見えた。
チャンミンは、鼻から息を出して笑った。
階下に駆け下りる。


「チャンミン様、お見えに」


「分かってる!」


階段の下で使用人が声をかけてきたのを遮って、上着の裾をはためかせてチャンミンは客間に向かった。


並べておいてあるソファーのいつも同じ場所に座っている。


聞いたところによると、「いつも自分は汚れているので、このソファーにだけ犠牲になってもらうことにした」と、言うことらしい。


「遅かったな」


向かいのソファーに腰をかけた。


「悪い悪い。すごいニュースがあるぞ」


部屋には暖炉が赤々と燃えている。この友人のために一時間も前から部屋は暖められていた。


「なんだよ」


チャンミンは自然と顔が綻んだ。


この男と過ごす時間が何よりも楽しいのだ。


いつもは旧貴族として、言葉遣いの比較的柔らかなチャンミンだけれど、この時だけは童心に返ったようになる。


初めて会ったその日に、友情にも運命があるのかと不思議に思ったほどだ。


そして、この友人は、いつもチャンミンに誰よりも新しい情報を届けに来るのだ。


友人は自分の心を落ち着かせるように、一呼吸おいてチャンミンを見た。


「……もう一つの城も買われているらしい」


「本当か」


チャンミンは顔の中で、人より比率の高い目を更に大きくして見せた。


やはり、今日の情報も言うだけのことはあった。


友人は頷く。


「明日の夜会では、その新しい城主も来るそうだ」


「それはすごいな。二つの城の城主か」


「ああ」


「一緒に行くだろ?キュヒョン」


友人の名前だ。


でもチャンミンはこの友人が首を縦にふらないことも予感していた。


「そうはしたいけど、明日も時間が読めないからな。気にせず先に行ってくれ」


やはりそう言って笑った。


「そう……」


思っていたけれど、少しばかり残念な気持ちになった。


なかなか二人が同じ夜会に招待されることはない。


チャンミンは生来夜会はそこまで好きではない。


でも今回は友人と一緒だということだけで、いつもより楽しい気持ちになっていたのだ。


「仕事が片付いたらすぐ行くよ」


その顔を見てキュヒョンが笑った。


「うん」


チャンミンは頷く。
チャンミンは働かなくとも生計を立てることができる。
貴族制度が撤廃された後、貴族の多くが貧困で苦しんだにも関わらず、彼には生活を変えなくてもいいほどの十分な資産があった。
けれど、キュヒョンに仕事と言われた時にはいつも心なしか羨ましいと思ってしまうのだ。
それはこの友人が、その仕事に多大いなる情熱を持っているからだった。
それが少し羨ましく、今回は少し残念にも思ったが、チャンミンは自分の望む仕事をしている彼をとても誇らしく思っていた。


二人は早くに親を亡くしている。
それは稀な一致であり、それ以外何一つ境遇が違うことは稀な不一致だった。
その全ての条件の下、町中の芝居小屋で出会ったその日から、二人はすっかり意気投合したのだ。


これはアンシャンレジーム崩壊後に生まれた、元貴族と市民の友情なのだった。



「明日はチャンミン、モテて仕方ないぞ」



キュヒョンがにやにやと笑った。


「やめろよ」


「いや、お前も逃げてばかりいないでそろそろ」


「いいんだよ。俺はまだ」


そう言って首を振るチャンミンに、キュヒョンはいつも言葉がつまって、冗談を言っていた声色が変わってしまう。


「また、お前はそうやって」


「いいんだよ、うるさいぞ。お前こそ見つければいいだろ」


「俺は仕事が奥さんだ」


チャンミンはいつもの友人の口癖に微笑んだ。


「はいはい」


「いや、でもどんな人間であれ、城主二人が一番、目は引くだろうな。俺まで呼ばれるような夜会を開くくらいだ」



キュヒョンの言う通りだ。




明日の夜会はとても、不思議なものだった。




ここは辺境の町である。しかしそんな町にも、二つの小さな城があった。
革命後は町で一番資産のある貴族が保有していたが、近年、病で倒れ、その土地を手放す話が出ていた。
小さいとはいえ城である。
誰も買い手はつかなかったのが、二つ続けて、新しい所有者が現れたのだ。


その最初に買われた城から、二週間前、夜会の招待状が届いた。


チャンミンは夜会に招待されることは多々ある。
それはその容姿に加え、チャンミンがこの町でも裕福な方の貴族だったからだ。
夜会は、実力者、権力者など、招待する側のステータスに反映されるものが招待されることが多い。


しかし明日は、この町の年頃の男女が、なんと全員招待されたのだった。
言葉通り宮廷舞踏会だ。



「どんな人間なんだろうか」



チャンミンはまだ見ぬ主催者を思って、視線を空に漂わせた。








つづく

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