「This is love comedy.12」ユノ×キュヒョン
「へぇ、お粥か。これは助かるよ。
お母さんにお礼言っといてよ。ってかこれ二人分?」
少なくないか?キュヒョンを見ると視線を泳がせた後、顔を上げてこちらを見た。
「食べる……勇気なくて」
勇気?なんだその勇気?
「って、お前……」
「は?」
その顔を凝視する。明らかに赤い顔のキュヒョンが視線をまた泳がせる。
「お前もかよ!」
俺からうつったのか。いや、こいつにうつされたのかもしれないな。これはあのお約束のあれでうつるあれだな!そろそろ俺のドキュメンタリー返せよ!
「ユノヒョン?」
椅子に置いた自分のリュックから、処方された風邪薬と携帯電話を取り出す。
「あ、ドンへ?キュヒョン風邪引いたみたいだから、誰でもいいからよこしてくれ。うん、じゃあ」
「ユノヒョン!俺大丈夫ですよ!」
「お前ねえ、今人一倍大変なんだから、体調管理しないとだめだろう?って俺も人のこと言えないんだけど」
全く、その体で良く来たな。
「とにかくこれ飲んどけよ。動けるくらいだから一晩寝れば治るだろ」
グラスに水を入れて、持って行く。キュヒョンは赤い顔で、素直に薬と水を飲んだ。そりゃ元気なく見えるわな。
「明日の分もやるから。その時は食後に。あ、今もお粥分けれるな」
「いえ、それはいいです」
なんだよ、食べてきたのか。
「じゃあ、俺今それ食っていい?腹減ってきたし」
キュヒョンがまじまじと俺を見た後、何も言わずたどたどしく丼に移す。どんだけ慣れてないんだよ。
「キュヒョン、俺がレンジに持ってくから」
「あの」
「いいから。座ってろよ」
途惑うキュヒョンの手からさっさと取って、レンジのボタンを押す。今日はここでインターホンが鳴る!
「来たな」
モニター前に行こうとすると、キュヒョンが後ろからついて来る。
「ユノヒョン、ちょっと」
シャツの背中を掴まれる。
「何だよ?」
振り返りながら、開錠ボタンを押した。
「あの、えっと、まずお粥なんですけど」
「どうした?やっぱり食べたい?」
「いえ!」
キッチンからレンジの音が聞こえた。
「出来たな」
ダイニングに戻ろうとすると、シャツの背中が掴まれる。だから何なんだよ!
「キュヒョン!」
「ま、待って!」
「何なんだよ!」
「……食べなくてもいいです」
いつの間にお前は俺の腹になったんだよ!
「なに?やっぱりお前が食べたいのか?」
「いえ!」
背後でブザーが鳴った。
「来たな」
出ようとすると、掴まれたままだった。
「キュヒョン!」
「まだあるんです!」
「今度にしろって!」
手を伸ばして、ロックをはずす。
「ユノヒョン!聞いて!」
背中にしがみつかれる。こいつ大分熱で頭やられてきたな!
「おい!入れよ!」
「ユノヒョン!俺とデートするんです!」
開いたドアの向こうに立っていたミンホが、無言でそのままドアを閉めた。
「待てって!」
ドアを開ける。
「お久しぶりです。それでは新曲『俺はタクシーじゃない』聞いて下さい」
「今度聞いてやるから、こいつはがしてくれよ!ミンホ」
「ユノヒョン!デートの話が終わってません!」
「じゃあ、その話が終わったら三年後くらいに迎えに来ます」
「いいから今連れて帰れよ!ミンホ」
「俺も結構忙しいのに」
俺の背中からキュヒョンをあっさり引きはがす。
「風邪引いてるのはユノヒョンだって聞きましたけどね、チャンミンさんに」
チャンミンはいつから瓦版になったんだよ。
「うつったんだよ!」
「それは仲が良い」
ミンホがキュヒョンを見る。キュヒョンは眉をしかめてむくれている。
「とにかく風邪治せ、キュヒョン。デートは空いてたらいつでも行ってやるから」
キュヒョンの目が輝く。
「あとお粥、お母さんにお礼言っといてくれ」
キュヒョンの顔が曇る。だから、何なんだよそれ。
「あと、ミンホ」
ダイニングに引き返して、薬を取って来る。
「帰ってからお前も飲んどけよ。じゃあな」
ドアを閉めて、倒れそうになる。が、頑張れ俺。とりあえず、飯食って薬飲んで寝よう。
レンジから、丁度良く冷めた粥を取り出す。テーブルについて、スプーンで口に含んで噴き出した。
そういうことか……。
「お前なあ」
溜息をついて、口に運ぶ。
塩と砂糖間違えるなよ。王道に殺されそうだ。
つづく