「This is love comedy.13」ユノ×キュヒョン
しかも俺の分の薬なくなってたしね!って事で、次の日。
意識を失ったように、寝てたな。
でもそのお蔭か熱は下がっているようだ。時間は?まだあるな。もうひと眠りするか。
何かあいつ昨日変なこと言ってたな。
「俺はタクシーじゃない」
じゃなくて。
「デート……」
良くも、次から次へと。
枕に顔を押し付ける。まあ、所詮男同士でどこ行こうが恐かないけど。あいつさえ言わなければデートだなんてばれるわけがないんだし。
俺も腹括ったんだから、映画でも買い物でも行ってやる。ファンにさえデートってばれなければいい。
「って、おい」
「どうしました?」
これは夢か。
俺とキュヒョンは今、このくそ寒い中、大量のファンに囲まれている。
マネージャーには適当な理由をつけて、仕事終わりに今から行きたいと言うキュヒョンに、連れて来られるままついて来たら、こうなった。
「まてまてまて!」
ま、まず言うことを考えろ俺。
「まず」
「はい」
あれから三日経ちました。
じゃなくて。
「この人だかり」
「はい」
これはもうこいつのファンなんだか俺のファンなんだか分からない。何でこんな事になっているかと言うと、こんな場所に来て、そんな事しようとすればそうなるだろう。
仕事帰りだから追っかけもついて来て、体調や仕事の関係で三日ぶりに会った俺達はカップルに溢れた夜の船着き場にいる。
目の前には巨大な遊覧船。
「大丈夫ですユノヒョン!中は貸し、もがっ」
キュヒョンの口を手で塞ぐ。
お、お前は本当に見上げたやつだよ。
男同士でもデートっぽい事って意外とあるもんだな!これは俺が悪かった!
デートなんだから貸切りの遊覧船くらい乗るよな!
俺はだめなやつだよ!こんなの想像しとけってな!
んなわけあるか。
「ユノヒョン!夜景綺麗ですよ!」
キュヒョンが目の前で歓声を上げる。俺は頭を抱えたまま、まだちょっと現実を受け止められなくて、目の前のキャンドルをぼうっと見つめる。しっかりしろ俺。
「ユノヒョン!寒いんですか!」
いや、デッキでもストーブを煌々とたかれてるからそんな事ないんだけど。
ま、まあ、男と二人だって乗るか。貸切りの遊覧船で夜景見るよな。うん、そうだよ。こんなの全然普通だよな!
「ユノヒョン!料理来ましたよ!」
ソースでハートを描くのはやめろ。
「ユノヒョン!」
いや、こいつは悪くない。承諾したのは俺なんだし、乗ってしまったんだし。
ばれるどころか見せつけられて困惑した顔のファンを置いて岸は離れていく。
とにかく。
「食おう」
「はい!」
料理はうまい。
「美味しいですね!全て俺の好物にしました!」
「分かってる!」
「あ!忘れてました!」
キュヒョンの手でスパークリングワインが注がれる。
「ユノヒョン!乾杯しましょう!」
キュヒョンは本当に楽しそうだ。俺は治った風邪がぶり返しそうだ。
でも手元を見ると、グラスの中で薄黄色の泡がはじけていく。
顔を上げると遠くで高層ビル群が輝いている。自分達の頭上をライトアップされた大きな橋が通り過ぎる。
考えるとこれはこいつの理想のデートなのかもしれないな。
本来なら、こんな仕事をしているから、自分達は恋人とこんなデートは絶対出来ない。
好きでもない男同士だから理想のデートが出来るなんて皮肉だ。思わず少し笑う。
そうだよな、俺も楽しむか!
グラスを持ち上げる。
「乾杯!」
まあ、男同士でもギリギリだけどな!キュヒョン!
つづく