「This is love comedy.14」ユノ×キュヒョン
飯時で腹も空いていたから、俺達は夢中で料理を食べて、普段と違う空間で、はしゃいで酒も飲んだ。
「ふう」
酔い冷ましに水を飲みながら、手すりから夜の川を眺める。かなり寒くなってきたけど、火照った体では我慢できないほどじゃない。
「ユノヒョン!」
ビールの瓶を片手で持ってきたキュヒョンが空を指さした。点滅する光と共に、夜の飛行機が飛んでいく。いつまでも眺めて、それが見えなくなると、キュヒョンは隣に来た。
こんな所で男と二人で夜景を見るとは。
「お前のデートはすごいな」
キュヒョンはまた、飛行機を探している。聞こえてないのももういい。許す。
「元気出たみたいで良かったです」
空を見上げたまま言われる。その言葉に自分の動きが止まった。
「え?」
声を上げる。キュヒョンが嬉しそうに俺を見る。
「元気になりましたか?あれ?ユノヒョン?」
俺はしゃがみ込んでいた。
「ユノヒョンどうしました?」
やばい。
「キュヒョン」
「はい?」
キュヒョンが不思議そうに俺を覗き込んでいる。それを見上げながら、片手で自分の口元を覆った。やばい。
「俺、すっごい感動してる」
俺の姿と言葉にキュヒョンも動きを止めた。目を丸くして、俺と見つめ合う。そう言えばこいつの顔をまともに見たのも三日ぶりなんだよな。その顔がみるみる赤く染まっていく。
それを見ながら、俺は自分でも恥ずかしくなるくらい、俺を元気づける為だけに、こんな大層な計画を立てたこいつに感動していて、立ち上がりながら、手を伸ばして、その体を思いっきり抱きしめていた。
こんなことになる前は、合同のライブが終わると、ステージ上でこいつと抱き合ったりしてたけど、最近は無くて、今はこんなシチュエーションで、俺みたいな男に抱き締められて、すごく可哀想だと思うんだけど、余りにも感動してて抑えられなかった。
腕の中で固まっている体に言う。
「ありがと。お前が思ってるほど、俺元気なくないんだけど。でも本当にありがとう」
冷たい夜風が頬を撫でていく。七色にきらめく夜景が幾つも通り過ぎる。一呼吸置いて、自分の行動と、うんともすんとも言わないキュヒョンに段々と冷静になってくる。
あれ?これ俺から手出したことにならないか?いや、これはカウントされないよな。
「悪い。これはそういうのじゃなくて」
そういう王道じゃなくて。体を離しながら謝ると、真っ赤な顔で俯いている。
「あれ?お前、まだ風邪」
キュヒョンが片手の甲で顔を伏せる。
「違っ」
「お前まだ治ってなかったのに、こんなとこ来たの?」
その顔を覗き込む。キュヒョンは赤い顔で俯いたまま首を振る。
「大丈夫か?」
肩に手をのばそうとすると、その体がびくりとのけぞった。これはカウントされたな。
「ごめんごめん、もう触らないから、そんなに気にするなよ」
言っとくけど、お前俺にもっとすごいことしてるからな。
「違っ」
キュヒョンが顔をあげる。
「俺お茶でも飲もうかな。お前体きついんなら、船室の方に移動しようか」
「本当に、大丈夫ですからっ」
必死な目で、訴えてくる。
「まあでも船室に移動しよう。なんか甘いもの食いたくなってきたな。まだあるかな?」
「あります!」
何となくキュヒョンが元気になったのを見て微笑んだ。
「よし、食おう」
つづく