「This is love comedy.18」ユノ×キュヒョン
大きなレッスンルームにみんなで何枚もの大皿に盛られた料理を囲む。
俺もはじめて会う人間にぽつぽつ話かけられながら、紙皿に取って食べてみる。
なかなか美味い。
キュヒョンはひっきりなく役者やスタッフに話しかけられていて、随分可愛がられてるんだなと思って見ていると、俺のところに小走りで来た。
「どした?」
キュヒョンがはじけるような笑顔で言う。
「空いてる部屋使って良いそうです!」
ん?何に使うんだ?
キュヒョンが自分の皿に料理を一種類ずつ盛り始める。ん?ん?
「なになに?」
俺の皿にも入れて来る。自分の皿を一枚俺に持たせて、俺の腕を掴む。
おいおい?訳分からずに、連れて行かれるまま、全く何も置かれていない鏡張りのレッスンルームに入った。床に座らされる。
「食べましょう、ユノヒョン!」
キュヒョンが嬉しそうに向かいに座る。ん?どういうことだ。
「キュヒョン、ここじゃ俺を見せつけられなくないか?」
ってなにこの俺見て発言!いやそういうわけじゃないんだけど!それともこれマジックミラーなの?
「いただきます!」
久し振りに全く話を聞いていない!
「美味しい!ユノヒョン美味しいです!」
うん、それはそうなんだけど。キュヒョンは食べるたびに歓声を上げる。
「ユノヒョン、これ食べましたか?これ美味しいです!」
フォークで刺した鴨肉を見せられる。俺は取って来てないようだ。ってかそんな状況じゃなかったしな!
キュヒョンが俺の皿にないのと自分の最後の一切れになったそれを交互に見て途惑う。なんだ?
「あ、ユノヒョン、これ、あの」
おずおずと俺の顔の前に肉を差し出す。キュヒョンがしようとしていることが分かって「え」と声を上げた。
キュヒョンの顔が真っ赤に染まる。
「あ、いえ、別に」
いや、そんなに意識するもんじゃないだろ。こんなの男同士なら平気だろって、お前自身がそれはきついのか。
「俺はいいから。大丈夫だよ」
苦笑しながらそう言うと、キュヒョンがぼんやりと俺を見た。俺が食べられないのを気にしているらしい。複雑な奴だな。
「じゃあ飲み物とそれ取って来るよ」
立ち上がろうとして腕を掴まれる。
「俺が取ってきます!」
「いや、いいよ」
お前は食べてろよって言う前に、キュヒョンが急いで部屋から出て行った。まあいいけど。そのまま座って食べる。
しかし、何で俺は誰もいないこんな部屋で飯を食っているんだろうな。あいつは何考えてんだ。
「ユノヒョン!」
キュヒョンが飛び切りの笑顔で茶のペットボトルと山盛りの鴨肉を大皿に入れて戻って来た。
「お、おい。そ、その量」
今朝の胸焼けすごかったんだぞ。
「残り全て持って来ました!一緒に食べましょう!」
こいつもしかして俺を殺そうと!
でもまあ食ったんだけど……ってことで何となく話も弾んで料理を食べ終える。
「キュヒョン、そろそろ戻ろう。お前のバースデーケーキ持ってくるよ。みんなで食べよう」
持って来てもらったお茶を飲みながら、そう言うと、キュヒョンがまたぼんやりと俺を見た。
「キュヒョン?」
昨日から、何なんだそれは。
「……ここで食べます」
「ん?」
「ここで食べたいです!」
ん?ここで?
「俺たちだけで全部食べます!」
言いながらキュヒョンが立ち上がった。待て待て待て!すごい量だぞ!
「キュヒョン、落ち着け、かなり大きいよ?」
今飯食ったの忘れちゃったのか?それとも本当に俺を殺そうとしてるのか?
「だめですか?」
「俺、昨日も今朝も食ったし量食えないよ?」
「俺が食べます!」
そう言って俺の顔を伺うように見下ろす。
そう言われてもな。難色を示している俺に段々と口を尖らせて来る。
いや、まあ、お前のケーキだし、いいんだけど。
「食えるの?」
「恋人が用意してくれたケーキですから」
ぽつりと呟く。
本当に徹底したやつだな。
「じゃあ、ここで待ってろよ」
苦笑して立ち上がると、キュヒョンが元気を取り戻したような大きな返事をした。
つづく