「This is love comedy.19」ユノ×キュヒョン
一応何かあったときの為に二種類用意しておいたから、一つをみんながいるホールに運んだ。
と言っても一個で人数分十分に食べられる量だから、これ一つをほぼあいつだけで食いきるのはやはり無理だろう。まあ残して構わないんだけど。
キュヒョンの待つ部屋の前で、台車で運んだケーキに、蝋燭をさして火をつける。
あいつに好きなほう聞けば良かったな。失敗した。こういうの久しぶりだからな。
ドアを開けて、電気を消す。
キュヒョンは座って待っていた。
バースデーソングを歌いながら、二段の四角いケーキを手で持って入っていく。その目の前にそっと置いた。
「吹き消して、キュヒョン」
一息で年の数だけさした蝋燭が消える。いい肺活量だな。
拍手をしながら電気をつけようと立ち上がると、また腕を掴まれる。暗いよ怖いよ。
「ユノヒョン、ライターありますか?」
え?まだやりたいの?
渡すと、キュヒョンが空の皿に蝋燭を数本立てて火をつけていった。
「これで食べましょう」
「おー、いいな」
ろうそくに照らされたキュヒョンが、ケーキを嬉しそうに眺めている。
もしかしてこいつは静かに祝われるのが好きだったんだろうか?
「キュヒョン、食べてみて」
「はい」
沢山並んだ苺の一粒と一緒に、口に入れる。
「美味しいです」
にこりと笑う。良かった良かった。これだけ苺が乗っているから、結構さっぱりしてると思うけど。目の前でぱくぱく食べていく。何口か食べて、手が止まった。
ん?早くないか?そう思っていると、その目がこちらに向けられる。
「食べないんですか?」
「残りを少しもらうよ。先に食べて」
まあ、すごい残ると思うけど。キュヒョンが俺の顔をじっと見る。なんだ?
「ユノヒョン、苺好きですか?」
「好きだけど?」
暫く俺を見ていたキュヒョンの目がケーキに移る。苺を一粒刺す。その苺がそろそろと俺の方に差し出される。
俺は猛獣か。そう不満に思いながら口に入れる。
「ん?うまいよ?」
キュヒョンが目を丸くする。すかさずまた苺が刺されて俺の口元に運ばれる。
「ありがと?」
口に入れる。その目が輝く。今度はスポンジも一緒に運ばれる。
わけ分からずまた食べると、目を輝かせたキュヒョンが次々と口に運んでくる。
「お、おい」
待て待て。胸焼け胸焼け。手のひらをキュヒョンに向ける。せっかく治ったんだから。
「俺はいいから、食べろ」
キュヒョンが手を止めて、俺を眺める。こいつもしやと思いますが、もう一足先に胸が焼けてしまったのか?
眉をひそめると、俺の手にそっとフォークが握らされる。
んん?まだ食えと?
その顔に目を向けると、視線を泳がす。どういうことだ。
はい、というとこでノックの音!
すみません、休憩終わりです!とノックの後に開いたドアから、スタッフが顔をのぞかせた。返事をして、キュヒョンが小さく溜息をついた。
「頑張れよ」
声をかけて、その頭を撫でようとするだけ!ふわって!
「ユノヒョン、残りは練習終わって食べますから」
ふわっと浮かんでいる俺の手をちらりと見て、そのままキュヒョンは視線を足元に落とした。
「それは気にしなくていいけど、今日何時までなの?」
「あと一時間半くらいです」
「じゃあさ、俺ここで寝てるから、終わったら送ってってやるよ」
キュヒョンが凄い速さで顔を上げる。
「本当ですか?」
「ん。俺明日午後からだから。終わったら起こして」
元気よく返事をして、部屋から出て行く。
とりあえずケーキを俺の車に乗せて、俺は寝ます!おやすみなさい!
つづく