「This is love comedy.22」ユノ×キュヒョン
一瞬、息が止まった。
半分寝ているんだろう、気持ち良さそうに話される。
「ユノヒョン、いいですか?」
夢見てるみたいに、微笑まれる。不意に出された自分のタイムリミットに、言葉がつまった。
その、ミュージカルにかける情熱を危うく取り違えそうになる。本当に俺達は付き合っているのかと。
微笑みを凝視したまま、どの答えも喉の奥から出てこない。
曖昧な笑みで返して、支えるように背中に回していた手をその髪に伸ばして撫でた。
返事を聞こうと俺を見上げていたのが、うっとりと目を閉じていく。
その意識が切れることを祈るように撫でながら、胸元から寝息が聞こえて来ると、自分も一度目を瞑った。
その体を倒して膝で寝かせる。
「何で答えないんですか?」
ミンホが前を向いたまま、信号待ちで動かす必要のないハンドルを片手に置いて、窓枠に肘掛けたもう一方の手で、自分の顎を触っている。
「それより前にいけるかもしれないだろ」
起こさないように声を抑えた。
「へえ。ユノヒョンのドラマの撮影、これから強行軍になるって聞きましたけど」
瓦版め。
「どうせ、この感じだと覚えてないよ」
信号が変わる。
呟く様に言った俺をバックミラーで一瞥して、ミンホはそれ以上何も喋らなかった。
発進する車の中で、余程疲れていたのか死んだように眠っているキュヒョンを見下ろす。
覚えていたら、どうにか調整するよ。
本当は、昨日で最後だった。
お互いのスケジュール的に、次に会うのはキュヒョンも言った、ミュージカルの最終公演のはずだった。
予定外に呼び出されて、一日多くこの関係で過ごすことになった掌の下の体は、つい昨日触ることに許可が出たとは思えないくらい、見慣れたものになっていた。
つづく