「眠れない夜のエンジェル3」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、自分の子孫であるかもしれない、もう一人のシム・チャンミンの「眠れない悩み」をまさに聞いているところなのです!
「恋を……してて」
もう一人のチャンミンが、ぽつぽつと語りだしてくれました。
「それで……眠れなくて」
僕は微笑んで頷きました。
古今東西、恋の悩みはつきません。昔から人々を悩ませていますから。
「それはとっても素敵なことです、チャンミン」
「……そうですか?」
チャンミンが僕に顔を上げました。
「はい。恋をしないと子孫は繁栄しませんから」
「はぁ……」
「ところでチャンミン。その悩みよりもちょっと気になったことがあるんですけど、いいですか?」
「え、俺の悩みよりも?」
「ええ……その、後ろのポスターなんですけど」
チャンミンは後ろの壁に貼ってあるポスターを振り向いて見ました。
「それ、あなたの顔ですか?」
「はい、そうです」
「……なんで、自分の顔のポスターを?」
僕は自分の子孫が驚異的なナルシストではないかと不安になっていたのです。
「俺、アイドルなので」
「あぁ!なるほど!そうでしたか!」
ナルシストなんて思ってしまって恥ずかしいなぁ!
「って、ええええ!!!」
続けて声を上げた僕をチャンミンは平然と見ています。
「アイドルってあのアイドルですか?」
「多分……そのアイドルだと思いますけど」
「わぁ……」
時代は変わったものです。
僕が人間だった頃には、身長が高すぎると良く人から言われていましたので。
まさか、自分と何から何まで同じ見た目の子孫がアイドルになっていたなんて!
僕は驚いた顔のままふと思い立って言いました。
「……それでも、やっぱり自分の部屋に自分の顔のポスターを貼るのは……」
僕の顔でもあるので。
「はぁ。これには理由があるんですけど」
「え!理由が!」
また驚いてチャンミンを見つめました。
「……それが悩みに関係してるっていうか」
「そうでしたか!!それよりチャンミン!ちょっと気になることがまた出来たので聞いてもいいですか?」
チャンミンは真顔で目を瞬かせた後、「どうぞ」と言う風にてのひらを僕に向けました。
「都心で、この立地でこの広さの寝室ということは、あなたはもしかして相当売れっ子のアイドルなんでしょうか?」
「……ええ……まあ……」
なんということでしょう……。
自分の子孫が、そんなに売れっ子のアイドルになっているなんて。
もしかしたら、日本に来ているのもそういう事情があるからなのかもしれませんね。
「すごい……」
僕は思わず感嘆の溜息をもらしてしまいました。
「あの、ご先祖様。それより俺の悩み聞いてもらってもいいですか?」
「え、ああ。そうでしたね!ごめんなさい、すっかり忘れてました」
「……」
「で、チャンミン。あなたの眠れない悩みは何ですか?」
「だから、恋を」
「あ、そうでした!」
恥ずかしいなあ!二回も聞いてしまうなんて僕は天使失格です。
「何でその恋に悩んでいるんですか?」
「……もういいです。見てもらった方が早いっ」
チャンミンは少し伸び気味の黒い後ろ髪を乱暴に掻いて、突然立ち上がりました。
「え、見るって?え、チャンミン?」
チャンミンは何も言わず「おいで」と言う風に僕に手のひらを動かして部屋を出て行きます。
何が何だか分からずに、僕はそのあとをついて行きました。
そしてチャンミンが入った部屋に、続いて入ったのです。
「この人です。俺が好きなのは」
そう言ったチャンミンの隣に立って、僕はその人を見下ろしました。
わぁ。寝てる。
めっちゃ寝てる。
この人、口開けてめっちゃ寝てる。
電気もつけっぱなしで、その人はベッドで仰向けで寝ています。
そして良く見れば、あのポスターのチャンミンの隣に映っていた人ではないでしょうか!
僕はその人をしばらく眺めてからチャンミンに向きました。
っていうか。
「これ男だよ?」
チャンミンは顎に手を置いて、その人を見下ろしながら答えました。
「そこ……なんですよねえ」
つづく
2016/03/10 02:00公開