夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「春の雨」キュヒョン×リョウクの短編


硝子についた水滴の向こうに滲む東京を見下ろしていた。



春の雨。



ソウルより気温の高い町はきっと外に出ても寒さを感じないはずだ。


色とりどりの傘で、人の顔が見えない。


意識は水滴と一緒に流れてどこかに、染みてしまったように、形がない。



「風邪引くよ」



後ろからかけられた声で形になった。
振り向くと、ノートパソコンで、多分、ゲームをしている相手がいる。
気にせずに、また見下ろした。
午前中の昼間の喧騒は、この距離と、この硝子と、温かい雨で包まれている。
とても静かだった。
指をつけてみて、手の脂で曇る。
ああ、汚したな、と思った。


「聞いてるの?」


「聞いてるよ」


恐らく、少し機嫌が悪くなったけれど、表情は変えていない。
硝子の曇りを拡げたくはないけれど、手のひらをあてた。


「進んだ町だけど、ノスタルジックなところがあるよね」


見下ろして言う。


「そうだね」


ゲームをしながら簡単に返されたけれど、この相手は本当にそれを理解して返事をしている。
また意識が水滴になるのを感じた。


「こっち来たら?」


それをとどめられる。


「もういい」


「それどういう意味?」


声でこっちを見たのが分かった。


「リョウガ。それどういう意味?」


キュヒョンが軽く声を自分に響かせた。
自分も出来る、芸当だ。
溜息を吐く。
深い意味を持たせたいと思いながら、それに食いつかれると面倒に感じた。


「どういう意味でもないよ」


呟いた吐息で硝子は更に曇った。


「付き合いたいって言ってるよね?」


「そうだね」


その答えを望んでいながら、本当にそれがあるのか分からないほど嬉しさは何かで包まれて見えない。
止まない雨を支えている、あの赤い傘は女だろうな、と思った。


別に、あんな傘がさしたいわけじゃない。


ただ、気後れしたくないだけ。


嬉しい、と感じたいだけ。


でもそれは叶わない。


相手とは、違う。


意識の形がなくなって、とても単純な言葉が並んでいく。


自分とは違う相手と、こうなっていて、それはすごく、面倒だ。


「リョウガ」


「なに?」


「こっち来て」


相手がノートパソコンを脇に置いてしまったのが音で分かる。
また溜息をついた自分が向かうより早く相手が来てしまった。


「風邪引くだろ?」


すぐ背後で声をかけられる。
触れる距離に来れないのは、自分の承諾をまだ得てないからだろう。
でもそれも良く分からなくて、意識は、染みて行く。


「同じ格好してるだろ?」


バスローブでも寒くない。



春だ。



「ベッドにいようよ」



単純な相手に、雨は止まない。



でも、ノスタルジーとは、ここでお別れだった。










『春の雨』終わり







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