「眠れない夜のエンジェル4」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、東京都は港区で、僕の子孫であるかもしれないチャンミンから、『眠れない悩み』を見せつけられているところなのです。
「チャンミン」
「はい」
チャンミンは顎に手を置いて、この口を開けて寝ている男を見下ろしています。
僕ももう一度、見下ろしました。
「また一つ気になるところが出来たので聞いても良いですか?」
「どうぞ」
「……チャンミンは……ゲイ……なのでしょうか?」
「いや、好きになったのはこの人が初めてです」
「では、この人は……ゲイ……なのでしょうか?」
「いや、女と最近まで付き合ってました」
なるほど。確かに、この悩みは一筋縄ではいかないようですね。
っていうか。
「これ子孫繁栄しないよね?」
僕はまた、顎に手を置いているチャンミンに向きました。
「……俺、妹いるんで」
「ああ、妹さんがあ!」
僕は顔を明るくして頷きました。それなら安心です!
もしかすると僕の家系が途絶えてしまうかもしれないという懸念が、
先ほどから頭をよぎってしまっていたのです。
僕はチャンミンの先祖でもありますから。
今は天使ですけど。
「……子孫はいっぱいいると思いますよ」
「ああ!そうだっ!」
そう言えばそうでした!恥ずかしいなあ。
「しかし、チャンミン。ここにいて話していると、この人を起こしてしまうのではないですか?」
それは、あってはならないことです。
「じゃあ、俺喉乾いたんで台所行きますか?」
「ではそこで、引き続きチャンミンの悩みを聞きましょう」
このお部屋のダイニングに移動しました。
「ご先祖様、何飲みますか?一応酒もありますけど」
「そうですか。……お酒は何が?」
「……結構何でもありますけど。日本なんで日本酒もあります」
僕はテーブルについて、きょろきょろと、広いお部屋を見渡しながら返事をしました。
「じゃあ、それを燗で」
春とは言っても、まだ寒いですから。
チャンミンは「はあ」と言いながら、手際よく用意をしてくれました。
「ご先祖様……飲むんですね」
チャンミンはワインのグラス片手に、こちらを見ながら眉をひそめました。
しかし、自分と全く同じ外見の人間と向かい合って座るのは、とても不思議なことです。
「お酒なしでは語れない人が多いんですよ」
僕は猪口片手に微笑んで頷きました。
「それよりも、チャンミンが眠れるように、僕は、あなたの悩みを色々と聞く必要があります」
「まあ、聞いて欲しいことは沢山あります」
つづく
2016/03/14 01:00公開