「眠れない夜のエンジェル5」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、東京都は港区で、僕の子孫であるかもしれないチャンミンの部屋の台所にお邪魔しているのら。
「それで、僕は言ったんです!もう寝た方がいいんじゃないですか?お体に障りますよって、でも天下統一がすっごい気になるからって!」
「はあ……」
「あれ、逃げられなかったの、絶対寝不足が原因だと思うなあ……」
僕は火照った顔で首を傾げながら、猪口の酒を飲み干しました。
「はあ……」
「あれ?チャンミン、全然飲んでない……」
「俺、明日仕事なんで」
「え、じゃあ寝ないと!」
僕は目を丸くしながら、手酌で酒をつぎ足しました。
「いや、眠れないってゆーか。なんだろな、これ」
「じゃあチャンミン、僕の話聞いて!」
「さっきから聞いてますけど……」
そうして、天使チャンミンと子孫チャンミンの夜は過ぎていきました。
「ご先祖様、ご先祖様」
「も、もう飲めませんって」
「ご先祖様起きて下さい、朝になりますよ」
「え!」
僕は目をぱちっと開いて起き上がりました。
すごい頭痛です。
顔を押さえながらソファーの上で見廻しました。どうやらここは僕の部屋ではありません。
「ご先祖様、ほら、日が昇りますよ」
そうだ!この立って僕を覗き込んでいるチャンミンと、僕はお酒を飲んでいたのです!
でも全く記憶がないのです!
「あの、チャンミン、僕はしっかりあなたの悩みを聞くことができたのでしょうか?」
チャンミンは立ったまま、顎に手を置いて首をひねりました。
「あ、うーん。それ……はどうかなあ?まあ、一瞬忘れることはできた……みたいな?」
「ああ、そうですか、それなら良かったです」
僕はほっと胸を撫で下ろしました。
「チャンミン。僕は眠れない人の悩みを聞く天使なので、朝には帰らないといけないのです」
「はあ……」
「チャンミン。僕はあなたに恐らく幾つかアドバイスをしたと思いますが、」
「……」
チャンミンは何も言わず、続けるように僕に手のひらを向けました。
「はい。一番重要なのは、気持ちを伝える事です。前に進まないと何もなりません」
「これからむしろ朝来た方がいいんじゃないですか?」
「え、それどういう意味」
「いえ、でもそう簡単には行かないです、だって男同士」
「ああっ!日が昇ってしまう!チャンミン、その話はまた今度」
チャンミンは黙りました。
「では、チャンミン。また眠れない時は呼んで下さい」
「……はあ」
もう夜は終わりです。
真黒だった空がコバルトブルーに変わってきています。あと少しすればきらめく朝日が、
全てを染め上げていってしまうことでしょう。
天使チャンミンは、ダイニングの窓を開け、白い羽をぱさぱさと動かすと、夜空に飛び立ちました。
子孫チャンミンはその後ろ姿をクマができた目で見送ります。
二人の再会は、それからすぐだと、この時の二人は、知りませんでした。
つづく
2016/03/17 01:00公開