「Kiss me,baby.23」ユノ×チャンミン
『そっか』
返事は一時間後に来た。そして尚、俺を寝不足にしたその短い返事は、今日は俺を無表情にしていた。
いや、俺なら、分かるよ。
久し振りにやり取りしたメッセージで、しかも、プレゼントをなくされた後で(勝手に渡されたんだけど)、こんな報告されても何て返せばいいのか分からないし。まあ、でも、俺ならもっと相手に気を使った文章にするけど。
それでもって、俺の知ってるユノなら、分かるよ。
短い返事の方が普通だったし。返事がスタンプだけなんてこともザラだったし。
でも、俺のことが好きなユノもそうなわけ?
あれもユノだって、分かってるよ。でも好きな相手だよね?
それとも好きだから、そうなるわけ?
元からそうなのと、好きなのが混じってるわけ?
それとも、もう好きじゃなくなったから、俺の知ってるユノに戻ったわけ?
この、目の前で涼しい顔をして女子に囲まれて、笑って応対しているやつは、
一体今、何を考えているわけ?
俺は無表情で、出番待ちのステージ裏でも昨日に引き続き、悶々としていた。
いや、女子はいいんだ。俺も大好きだ。
それよりも、その今日もこちらを断固として見ない涼しい顔と、あの短い返事だよ。
俺のこといないように振る舞ってるけど。そんなこと通せると思ってるのかよ。
スタッフに呼ばれて、自分達の番が来る。
ほら、俺を見ないわけにはいかないでしょ?二人でいないわけにはいかないでしょ?
一緒にステージに立たないわけにはいかないでしょ?
「何か言って下さいよ」
「ああ、頑張ろうな」
なんだそれ。思わず、舌打ちする。
目はこっちに向いたけど、本当に俺を見ているのかどうか分からないユノと今日も似たような白いスーツを着て、用意されていた大道具のテーブルに向かい合って、つく。
合図を待つ。
これが今、プロモーション活動中の新曲の始まりだから。
俺達はそのテーブルの上でトランプをしている。
カードを持ってポーカーフェイスをするユノは、もうお手の物だ。
俺は危うく眉間を寄せそうになる顔に笑みを浮かべる。
ユノはあの唇で微笑んだまま、全く表情なんて崩さない。
もう、いっそのことまた怒らせてやりたくなるよ。
例えば、俺の後ろのセクシーなダンサーに、俺が今いきなりキスしても、それを崩さずにいられる?
彼女出来そうで良かったね、とか言ってにっこり笑える?
じゃあ俺が今、
その唇にキスしても、
その顔で笑っていられる?
つづく