「熱い愛」ユノ×チャンミンの短編
~~~今よりちょっと昔の話。
あっちーな。
ユノは思っていた。
気温は50℃を超えている。
でもユノは大丈夫だった。
そこにずっと座っていた。
というよりも立つことは出来なかった。
でも、暑いというより、
暇だ、と思った。
さんさんと照り付ける太陽と、三角形の見慣れた建物だけがぽつぽつと視界にあった。
音もなかった。
「こうやって、終わっていくのかな……」
と、呟いてはみたものの、何が?と自分でも思った。
「おい!待て!」
少し離れた場所から声がした。
ああ、ヒチョルだな、
とユノは思った。
「待て待て。これから俺が言う問題に答えなければいけない」
「え、問題に?」
やってるやってる、と、ユノは思ったけど、特に楽しさなどはなかった。
ただ聞いていた。
「答えられないとお前はここで死ぬんだ」
「ええっ!?」
「では、いきます」
「ええ!そんなっはやい」
「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足、これな~んだ?」
「ええ?分かりません!!」
「ちったあ考えろやっ!!!」
ぎゃー、
と言う声がして、静かになった。
ユノはただ聞いていた。
暇だな、とは思っているものの、自分の役目には飽きが来ていた。
ヒチョルは真面目だな、とユノは思った。
あまりにもその役目を長いことやっていると、それが本当に必要なのか分からなくなってきて、ユノは良く考えてしまう。
でも、そうして時々、何も喋らない自分を訝しみながら通り過ぎていく旅人を見逃してやると、
自分が守っている建物から、何か持って行かれたりすることは確かにあった。
難しいな、とユノは思っていた。
そんなユノの目の前に、今日も一人、旅人が視界に入った。
どうするかな、と考えたのは一瞬で、
ユノは即座に、
「ちょっと待って!」
と言った。
ユノが「待て」と言った瞬間、古代よりの呪いは始まってしまうのだ。
言われた人間は動けなくなってしまう。
でも、ユノに声をかけられたからではなく、この旅人はそのシステムを良く知っているようだった。
「はあ」
と、言って立ち止まった。
ユノは、見下ろした。
声をかけてしまったのは、この人間が、今まで見てきたどの人間の誰よりも、
よくできた外見をしている、と思ったからだった。
ぼうっと見つめた。
これが、恋というやつなんだろうか、と思った。
「あの、早く言ってください」
「では、行きます」
ユノは自分の役目を守った。
「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足、これな~んだ?」
ユノは自分の声が少し緊張していると思った。
「人間ですね。ではお疲れ様です」
旅人は通り過ぎていく。
「待って待って!」
古代よりの呪いが始まった。
旅人は汗だくの眉間に皺を寄せてそこに立ち止まった。
「えっと、上は大水、下は大火事、これな~んだ?」
二問目に突入した。
「風呂ですね。ではもういいでしょ」
旅人は通り過ぎていく。
「ダメダメ!待って!!」
古代よりの呪いで三問目に突入した。
旅人は大きな目を歪めて、怒りをあらわにした顔をしている。
「えっと、えっと、あらゆる国に住んでいて、あらゆる人と友達で、」
「太陽っ。じゃあ行きます!」
ユノが言い終わる前に旅人は怒鳴って足を進めた。
「ああ、ダメダメ!待って!!行かないで!」
「なんなんですかっ!!俺は一体いつまで命の危険にさらされなきゃいけないんですかっ!なにより暑いんですよっ!」
「君のこと好きになったの!」
「勘弁してくださいよっ!」
旅人は汗をかきかきうんざりと溜息を吐いた。
「だって仕方ないじゃん!」
「俺は男はダメなんです!っていうか、男?男なの?」
「男だけど、仕方ないじゃん!」
「俺このまま動けないんですかっ?!」
「……ねえ、名前は?」
チャンミン、とその旅人は名乗った。
チャンミンはよくここらを通る旅人だった。
でも、ユノの前を横切るのは初めてだったのだ。
チャンミンはユノの出す問題には全て答えることが出来た。
けれど、あまりにもユノが待って待ってと言うので、チャンミンは待つしかなく、
とうとう、その場所で宿屋を営むことにした。
チャンミンがいつもそこにいるせいか、
盗掘の被害もなくなって、ユノも旅人に問題を出すことはなくなった。
夜、灼熱の太陽が沈んで、チャンミンが寝ていると、
外から、
「チャンミン、好き」
と、ぼそっと、思い出したようにユノが呟く。
「はいはい」
と、言ってチャンミンは答えて寝た。
それから二人はずっと、熱さにも負けず、
まあまあ仲良く、
そこで暮らしました。
『熱い愛』おしまい