「Kiss me,baby.33」ユノ×チャンミン
そりゃ、そうだよな。
「ちょっとチャンミンさん。何でにやにやしてるんですか?気持ち悪いですよ」
「君ね、前から思ってたんだけど、俺にちょっとあたりが強いと思うんだよね。ユノともっと公平にさ」
「あ、私出番です。じゃあチャンミンさんも頑張って下さい!」
「あと俺の話をね」
って、もういないし。
まあ俺の話は、
……あのポーカーフェイスのうまいリーダーに、聞いてもらえばいいか。
控室に入った途端、その手を掴んだ。
ぎょっとした顔が俺に振り返る。自分が後ろ手に鍵を閉めた音がする。
「なに?チャンミン」
ユノが眉間を寄せた後、口角を上げて微笑んだ。
どうやら目が合った時の顔は、ナシになっているらしい。メイクも落として私服に着替えた自分達は、はたから見れば元通りだ。
「さっき謝られた件なんですけど」
ユノの手が俺の手の中で動く。握手をしているような自分達だけど、これははたから見ても全く友好的じゃない。
俺は黒い瞳に引き寄せられるように近づく。
俺は、考えていた。
一番最後の、俺を好きじゃなかったユノと、話した俺。
恋人と別れて落ち込んでいたユノと、慰めていたのかもしれない俺。
あのメッセージの内容は見なくても思い出せた。
でも、あの時の自分達が実際どんな会話をしていたかなんてもう全く思い出せない。
俺が戻ってほしかったユノは既にいなくなってしまっていた。
俺の中のユノは、いつの間にか自分に告白してきてからのユノに変わっている。
同じように自分も。
元になんかはどうやっても戻れない。
さっきのだけでもう十分だ。
ユノがこの一年どんな気持ちで俺を見ていたか、良く分かった。
耐えられなかった気持ちが。
今でも、耐えられない気持ちが。
ユノみたいに、一年も好きな相手に恋人ができるのを、あんな目で待つことなんて出来ない。
俺ももう、我慢できない。
「謝られても俺、嬉しくないですよ」
さらに眉間を寄せた真顔のユノが振り解こうとした手を、強く握った。
黒い瞳が泳いだ。その指を絡める。
「やめろよ」
少し怯んだ目で見られるのも気にせず、顔を寄せる。
距離のなくなった相手が、手は繋がったまま、俺の背後のドアを開けようと、勢いよく自分の後ろに回った。
ノブの鍵に手をかける前に、その力でドアに体ごと押さえつける。
「チャンミン!」
「もうやめない」
つづく