「Kiss me,baby.最終回」ユノ×チャンミン
俺の体と重なって、上目遣いに見る黒い瞳にこぼす。まるで今にも泣き出しそうな子供のように、その唇を曲げてこちらを睨んでいる。
「ヒョンは、分かってない」
俺は下唇の厚いそこを見つめて、顔を傾けた。睨んでいた目が泳ぐ。
「スキャンダルはご法度だっていうのはそうでしょう。でもそんなもの無理ですよ」
「無理じゃない」
そう言った唇に傾けた顔を近づけた。その視線が集中し出す。
瞬きが遅くなって、
ユノの意識は流れていく。
「自分で言ったでしょ?俺に彼女ができても、嫌われても、俺達は一緒にいるって。それってどういうことだか分かりますか?」
唇が触れる前に止めた。黒い瞳が緩んでいる。お互いの吐息がかかっている。
呼吸は、二人とも乱れている。
「ちゃんと言わなきゃ分からない」
もう俺の唇しか見ないユノの頬が上気している。自分もそうだ。俺は耐えるように目を瞑って、また続ける。
「明日も、また明日も、俺達は会わなきゃいけない。そこらへんの芸能人のそれじゃない。
両想いの二人が、ほぼ毎日、同じ空間で、下手すれば寝る時も同じ場所で、
強制的に一緒にいさせられるんだ。そんなの、我慢できるわけないでしょう?」
瞳孔なんか、俺だって開きっぱなしだ。とろけそうな目で俺の唇を見つめて言う。
「できるよ」
俺は乱れた呼吸を戻すように息をのんで、鼻で笑った。
「できるって言うならヒョンはなめてる」
俺は少しその唇に触れてやる。顔を離すこともせずにユノがうっとりと瞬きをして呟いた。
「何を?」
恋の力を。
ユノはもう自分から顔を近づけているのも分かっていない。俺も限界に、またかすめた。
ユノが小さく息を漏らした。
「何をなめてる?」
「もういいです」
かするというよりもさすった。お互いに。
「これキスだから」
俺が呟いたのと同時に、一緒に声が漏れるほど、強く重ね合わせる。
押し付け合った側から、夢中で中に割って入って行く。
絡めると、力が抜けて、体がもつれた。
唇を離した俺をユノがドアに押さえつける。俺の耳の後ろに手をずらして、もっと深く舌が入れられる。吐息をこぼす間もなく、舌も唇もユノに吸い付かれて、
目を開けると、もうあの哀しい瞳は見えなかった。俺もまた閉じて、続けた。
ドアの外から足音が聞こえて、二人で目を開けた。俺が鍵を開ける。
顔を見合わせて息を整えながら、マネージャーが呑気に入って来るのを、
上気した頬のまま、自分達は横目に見た。
それでもユノはリーダーぷりを如何なく発揮して、付き合わないと言う。
最近は度々来るようになったユノのマンションで、今日は俺が簡単なご飯を作って、あとはリビングのソファーの上でいつものように考え込んでいるユノを呼ぶだけだ。
でも呼ばずに、その隣に座りに行く。
「チャンミン、やっぱりこんなのダメだ」
俺は慣れたもので、その首に腕を回して抱きつくと、ユノが黙る。
「ヒョン、こっち見て」
ユノの黒い瞳が、俺を見て潤む。
可笑しくて少し笑いながら、顔を近づける。
「チャンミン、だめだって」
そういうユノの手首には見慣れたものがつけられている。
「ユノ」
上目遣いに見られてまたにやけてしまう。
「チャンミン笑うなよ」
「こんな状況笑うしかないでしょ」
「俺、笑えない」
「可哀想だな」
鼻先まで近づけると、自分達は深呼吸し始める。
「こんなの変だよ俺達」
俺をうっとりと見つめたユノが言う。その髪を撫でる。
「ピンクの頭してる人にはお似合いですよ」
「チャンミンただの茶色じゃん」
唇を唇の前で止める。体内の音はいまだに暴れ続けている。
「変同士付き合うしかないですね」
俺は真剣な顔で頷いた。
「だめだって」
「じゃあ、もうキスはなし?」
「……」
眉をひそめながら、頬を染めて上目遣いで俺を見る。もう自分達の瞳孔は開きっぱなしだ。俺はまたにやけながら、その唇をかすめて言った。
「男でしょ?諦めて下さい」
息の乱れたユノが苦笑した。
――ルール③恋人同士になったらもっと沢山キスをすること。
観念したリーダーは、新しいそれも了承してくれた。
『Kiss me,baby.』END