「チャンミンくんの恋人8」ユノ×チャンミン
俺達はテレビの前にいた。
『緊急速報をお伝えします……昨夜未明よりソウル近郊で起きている、原因不明の人体縮小化ですが、現在のところ、ソウル特別市内で103件、京畿道内で21件、江原道内で8件、忠清南道で2件、……』
「信じられない……」
ソファーの上で俺は声を出した。
「時間帯も合ってるよ」
マネージャーはソファーの横に立って、腕を組んでいる。
「日本では、ないんですか?」
「みたいだな」
俺達は昼にこっちに来た。
ユノはテーブルの上で膝を抱えて座って眺めている。
そして、また体を前後に揺らして、
「原因不明か……」
と、ぽつりと呟いた。
マネージャーと俺が顔を見合わせて、ユノを見つめる。
「ヒョン、こういうのは意外と早く原因が分かったりするから」
「そう……かな」
体を揺らしている。
「ヒョン。ココア飲む?」
ユノがマネージャーをちらりと見た。
「いいよ。今は気にするな」
少し、表情を明るくしたユノが俺を見た。
また温め直したココアを掬ってやる。
さっきと同じ体勢で、膝に肱を乗せて頬杖つきながら、もう一方の手でスプーンを持って、
正面のユノに差し出す。
ユノはにこにこと飲んでいる。
「しかし、仕事どうなるかなあ……」
マネージャーがうなだれて溜息をついた。
「すいません」
飲んでいたユノがやめて、眉の下げた顔で俯いた。
「いやいや、ユノのせいじゃない」
マネージャーが慌てて言う。
『只今、新しいニュースが入りましたので、お伝えします』
俺達はみんなテレビ画面に向いた。
『先ほどお伝えしましたソウル特別市近郊で起きました人体縮小化ですが、原因と見られる関連性が見つかった模様です』
「ほら、早かったでしょ!」
俺はスプーンをコップの中に落とした。
「あっちいっ!」
「あ、すいません」
ユノが顔にはねたココアを手で拭いている。
『縮小化された方々はいずれも昨日発売されたスナック菓子「脂肪の恋人」を食べており、それも乳製品と一緒に摂取していたということです。情報によりますと、乳製品の中に含まれる乳糖「ラクトース」と結合して、人体に影響を与える成分……』
画面の中では、女性アナウンサーが淡々と読み上げている。
「脂肪の……恋人……」
俺は呟いた。
「なんか……見たことあるな」
マネージャーも呟いた。
昨日、日本に来る前の早朝の仕事で、ケータリングの中に沢山の菓子が置いてあった。
その中に、みんなで名前を揶揄していたものがあった。
それは確か、あれだった。
「いやいや、それはないだろ」
マネージャーがははっと笑った。
「だってユノはダイエット中だから、食べたらダメって俺は言ったはずだ」
「そ、そうですよね」
俺とマネージャーが二人でははっと笑いながら、テーブルの上のユノを見た。
顔を赤らめて、
恥ずかしそうに顎を引いて俺達にえへっと笑った。
つづく