「誰かの誕生日」キュヒョン×イトゥク(不思議な夜に)
「トゥギヒョン。それ何ですか?」
スウェット姿のキュヒョンが焼酎の一升瓶片手に部屋に入って来た。
俺は顔が弛む。
「うん。何となくな」
「なんかお祝い事でもあったのかと思いました」
床に座っていた俺の前に腰掛けた。
「まあ、誰かのお祝いかも」
「どういうことです?」
用意していた二人のグラスにキュヒョンが注いだ。
「いや、誰かは誕生日だろうと思って」
キュヒョンが手を止めて俺の顔を少し目を瞬かせて見てから、
また酒を注ぎだした。口の端を上げている。
「誰かの誕生日を祝うんですか?」
「そんなのもいいだろう」
目の前にあったホールのケーキをキュヒョンの皿に切り分けようとしたら止められた。
「待ってください。じゃあろうそくつけませんか?」
「ああ、あったかも」
俺は単独の仕事を終えて、移動車の窓から見えたケーキ屋で、なんとなく買ってみたケーキの箱の中を覗いた。
「あった。あった」
刺してみる。
「ライターないですか?」
ケーキを眺めていたキュヒョンが俺に顔を上げた。
「あるよ」
「なんで?」
「アロマ炊いたりしてたから」
立ち上がって、デスクの引き出しを開ける。
「そんなのしてるんなら、今度から俺が来た時にしてくださいよ」
「今はしてないよ」
息を出して笑った。
ライターで火をつけた。
「キュヒョン。歌ってよ」
「え、誰かのために?」
キュヒョンが噴き出した。
「お前の歌聞きたいよ」
「それなら一緒に歌いましょう」
「そうか」
俺が手を叩いて、始めようとすると、キュヒョンが「待って」と言った。
「やっぱり俺が歌います。誰かの誕生日はやめましょう。それよりも俺達まだそういうお祝いしてないでしょう?」
自分の顔がさっと赤くなるのを感じた。
キュヒョンが俺を見て、目つきを変える。
自分達の間にあったケーキをキュヒョンが何も言わずずらした。
その体が近づいた。
「待て、キュヒョン」
「待ちます」
『誰かの誕生日』おわり
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適当なカップルが見つからずに、このお二人に再登場して頂きました。
明日久しぶりに一人で過ごすことになりました当管理人が、自分の為に書いたのでありますが、「とうとう自分はここまで来たか……」と書きながら遠い目になりました。