夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「麒麟10」キリン×リョウク

新しいハート型の葉を足に巻いて、川でいつの間にか帽子をなくしていた僕は、


頭にもそれを巻いて、キリンと一緒にまた歩き始めた。



「あれも食べられるよね?」



キリンが少し首を下げて僕を見た。
洗うことが出来ずに、泣いていたそのままの顔で、キリンが向いた方を見る。
そう言えば、持っていたマンゴーもいつの間にかなくなっていた。


「あ、食べられる」


僕は声を出した。歌うことが仕事だから、普段から気を付けている僕の声は、少しかすれていた。
キリンと、その細長い沢山の実が密集して垂れ下がっている植物の元に歩いた。
他の動物も食べていて、まばらになっていたり齧られている。
あんなに泣いていたのに、見るとお腹が空いてきて、いっぱい取った。
剝いて、キリンに差し出す。


……バナナはすごく美味しかった。


本当に疲れていたけれど、歩くことはやめられなかった。
夜になると危険だと言う言葉は、体格の小ささもあって多くない僕の体力を、ちょっとずつ補充していく。
その言葉は多分真実だって、僕は身をもって知ったから。
それでも疲れはずっと最高潮だ。


「大丈夫。そろそろ抜けられるよ」


喋ることもなくなった僕に、
返事もままならない僕に、
キリンは時々話しかけてくれる。
その台詞を聞いて、少し疲労が抜けた。


「本当?」


「うん」


薄暗くなっているのが分かる。聞いたこともない鳴き声の鳥達が増えている。
姿は見せないけれど、四方八方で、かさかさと木々を揺らす音も増え始めた。
昼の動物達が、ねぐらに戻って、夜の動物達が起きてきたんだ。
僕の知らなかったところで、こんなに沢山の動物達が生きている。


「ねえ、走れる?」


キリンが突然僕に言った。


「え、今?」


足はもつれそうなほどなのに。


「あと少しだから、でもできなかったら違う方法考えるよ」


キリンが言う。でも脚は止めない。
何が何だか分からずに、慌てた僕は気づいた。
完全に日が暮れてしまっていること。
そして、何か、後ろから音が聞こえてきたこと。
身の毛がよだった。


「は、走る」


「うん」


また走った。でも本当に月明かりだけで、前が良く見えない。
キリンが前をゆっくり走るのに合わせて、僕は足元も見ずについていくだけだ。
後ろから、ぱしぱしと木々を折るような音も聞こえてきた。
僕達は更に速度を上げた。
足がふらつく。もう意識が朦朧とする。
でも音は、遠ざかっていく。


森がひらけていく。
ジャングルを抜けた。
砂漠化した大地がひろがる。


「こっち。こっち」


入口に近い、大きな岩にキリンが向かう。


あ、岩だ。


安心した。
岩は僕の中で、いつの間にか休める場所になったみたいだった。
でもその上に乗るわけじゃなくて、僕は岩陰に隠された。
後ろから聞こえていた音がまた大きくなっていく。
僕は走ったのと恐さで、心臓をばくばくさせながらも、ちょっとだけ顔を出して見る。
キリンは何も言わないから、これくらいは大丈夫なんだろう。


すると、僕達が抜けた獣道から、出てきた。


声を上げそうになった。
でも我慢できた。
固唾を飲んで見つめた。
あの道を作っていたのは……
立派な牙を持った、大きなゾウの大群が森から出てきた。


動物園で見たのよりずっと、大きい。


「人間は、彼らにとって唯一の敵だから」


頭上から言われた声を聞く。


「そうなんだ……」


きっと、とても我儘な理由で、彼らの敵になっているんだろう。
僕は大きな足で地面を踏みしめる沢山の後ろ姿を眺めた。


長い鼻を揺らして、月明かりの下、ゾウの群れは砂漠化した大地をゆく。
次のジャングルにでも行くんだろうか。
彼らが通った後は、ころころと苦いスイカが転がっていた。









つづく







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