「チャンミンくんの恋人14」ユノ×チャンミン
最近、俺がはまり始めた趣味。
ユノも知っているけれど、一緒にはしたことない。
日本で買ったやつを取り出して来て、デスクの上で箱を開けた。
こちらに移動させたユノが、中を覗き込んでから俺を見上げる。
「これで作るの?」
「はい」
ばらばらとピースをデスクに半分ほどあける。
俺は口元が弛んだ。
「床と壁から行きましょう」
デスクチェアーに腰掛けて開始する。
こういう単純なところは早い。
「この形のブロックを探して下さい」
ユノに見せる。
ユノは真面目に探してデスクの隅に運んでいく。
途中着ていたハンカチが、尖った角に引っかかって危なそうだったから、もっと肌に密着させるような着方に変えた。
赤や青、緑、黄色のブロックが、形になっていく。
「どうですか?」
「結構広いな」
床と壁だけの家に入ったユノが室内を見渡した。
ドアはないけれど、そこだけ壁を空けた。
「これから中も作るんで」
ユノが腰に手を置いて、もう片手を目の上に乗せてわざとらしく眺めるポーズをとる。
「何DK?」
「3DKくらいかな」
「いいね」
「でもキッチンないから3D」
部屋を分けていく。
ユノが汗をかきだした。
「疲れたら座ってていいですよ」
椅子を作って座らせた。
「ソファーも欲しい」
「いいですよ」
開始して三時間ぐらいして、椅子で休憩していたユノが立ち上がった。
「あのさっ!」
俺は手を止める。
「ちょっとさっ」
ユノが真っ赤な顔で腹を押さえている。
何となく察して、そっと掌を差し出した。ユノが少し首を傾げた。
「ここだと今作ってるし微妙なんで、俺がいる間はトイレでして下さい」
掌にユノが乗る。
指で支えながら、デスクチェアーに置いた。この方法だと、手で持つのも恐がらなかった。
トイレットペーパーとビニール袋も一緒に運ぶ。トイレのスリッパの上に置いた。
「じゃあ、30分くらいしたら来ますよ」
「そんなにかからないよ!」
「じゃあ10分経ったら来ます」
ドアを閉める。
今日は、風呂もどうにかしないとな。
髭も伸びて来てるし。
あれじゃあ、小さい仙人みたいになってしまうだろう。
電動髭剃りはダメだな。
だからってカミソリなんか使えないし。
一層伸ばしてから自分で抜いてもらうか。
あれ血も出るし涙も出るんだよな。
そんなことを思いながら、ブロックでベッドをこしらえる。
「あ」
いつの間にか10分過ぎている。
ドアをノックしに行った。
「いいですか?」
「チャンミンっ?!遅いぞっ!」
ドアのすぐ下から声が聞こえる。
「すいません。開けるんで離れて下さい」
「離れた」
声が聞こえて、ドアを開く。
真下を見下ろした。
ビニール袋を抱えたユノが立っている。
「ヒョン。手も洗いましょう」
二人で作業を続けた。
リビングと寝室、ダイニングと、ここだけは天井もつけたトイレができた。
デスクの四分の三程のスペースにユノの部屋が完成した。汚れないようにすべてにぴっちりとラップをかけてみる。これでブロックの尖った角も軽減されるだろう。
「ベッドとソファーにはタオル敷くんで。あとまだ尖って危ない場所にはガムテープ貼ります」
ユノが新しい自室に入った。
俺を見上げる。
「チャンミン、すごい」
「ドールハウスは趣味じゃないんで、これでお願いします」
ユノがぼうっと部屋を眺めている。
「チャンミン、こんなの俺のために作ってくれたんだ」
「まあ趣味と実益をかねて。って一緒に作ったでしょ」
「ありがとう……」
感動でなのか、心ここにあらずな感じでぼうっとしている。
ちょっと顔を覗き込んだ。
涙目になっているユノがいて、俺は噴き出した。
ユノの前髪が揺れた。
つづく