「眠れない夜のエンジェル7」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、カリフォルニア州はロサンゼルスで、僕の子孫であるチャンミンを探しているところなのです。
「ご先祖様ーー!!」
いましたっ!白いバンの横で手を振っています。
「二週間ぶりくらいですね。お元気でしたか?」
僕はその正面で地面に降り立ちました。
「結構普通に飛んでくるんですね。少しびっくりしました」
「それよりチャンミン、またあの恋の悩みでしょうか?」
子孫であるチャンミンは、同じアイドルグループのメンバー(男)に恋をしているのです。
「いえ、それが……」
チャンミンは言葉を濁しています。
サングラスをしていて顔の表情は分かりませんが、やはり悩んでいるようです。
「チャンミン、あなたと僕の仲です、何でも言って下さい」
「ご先祖様、ここがどこだか分かりますか?」
どういう意味なのでしょうか?僕は辺りを見廻しました。
「高速道路の上ですか?」
「そうです。そして、俺達の横にはトイレがあります」
「そうですね」
トイレがぽつんとある、小さなスペースに車を止めて黒い皮ジャンを着たチャンミンが立っていますね。
「今、この車の中には、俺の相方がいます。とても苦しんでいます」
「ええっ!それは大変です!どうされたんですかっ!こんなところにいる場合ではっ?!」
僕は目を丸くしました!
チャンミンは手のひらを、今度は逆方向に向けました。
「そして、このトイレの中には俺のマネージャーがいます。とても苦しんでいます」
「えええっ!それも大変です!どうされたんですかっ!」
僕は更に目を丸くしました。なぜ皆さん、そんなに苦しみをっ!?
「牡蠣にあたりました」
「え……」
「オイスターに」
「オイスターに……ですか」
チャンミンはサングラスを取って真剣な顔で頷きました。僕と同じ顔なので、何だか変な気分になります。
「今日でロサンゼルス公演は終わりで短い休暇に入るので、ちょっと大きな気分になって、有名店で生牡蠣を一つだけ食べたんです」
「チャンミンは大丈夫なんですか?」
「俺は食べませんでした。危ないことはしません」
「……えらいですね」
「ええ。でも有名店だったので、もしかしたら二人の体調のせいもあったのかもしれないです。俺達は睡眠不足と極度の疲労困憊を抱えているので」
「なんと……」
可哀想に。かける言葉もありません。
「というわけで、突然来た食あたりのせいでこんな場所に足止めになりました」
「救急車は?」
「事を荒立てるのは良くないと言う事で」
「移動しないんですか?」
「マネージャーが運転していて。タクシーを拾おうと思ったんですけど、真夜中だからかさっきからタクシーどころか車一台も通りません。とりあえず近くの病院に行こうと思って、今から俺が運転しようかと」
「国際ライセンスは?」
「都合よく今回だけ取りました。ユノと二人で西海岸をドライブなんてして、あわよくばいい感じにならないかと思って」
「そうですか」
僕の子孫も頑張っているようです。
「でも、マネージャーは危ないから、連絡した違うスタッフが来るのを待てって言うんですが、来ないんです。それで今から俺が運転するんで、隣でナビしてもらえませんか?ナビ機能ついてるんですけど、英語で道も暗いし。マネージャーも熱も出てふらふらなんで」
「ナビですか……できるかなぁ」
今回は、どうやら物理的に眠れない悩みのようです。
「まあ、いてもらえるだけで安心します。とうわけで、マネージャーきました」
がちゃっとトイレのドアが開いて、よろよろしながらマネージャーと思われる男性が、お腹を押さえながら出てきました。
「ちゃ……チャンミン。すまん……。こんなことになって。ユノは?」
「中です。俺が運転するんで、大丈夫です。とりあえずユノと一緒に後部座席に座って下さい」
チャンミンに支えられて、マネージャーが車の中へ入って行きます。
「だ……だめだ、運転は……スタッフくるから」
「オイスターバーからここに向かう途中に病院見えたんで、そこに行きます。あそこなら近いし、大丈夫です。強力な助っ人を見つけました」
「え……ってチャンミン、俺はもうダメだ。天使が見える」
「はいはい。乗って下さい」
マネージャーがふらふらしながら後部座席に乗りました。
「じゃあ行きますか。ご先祖様」
チャンミンが僕に振り返って、
緊張した顔で頷きました。
どうやらこれは、今までにない、
緊迫した悩み相談になりそうです。
つづく