「眠れない夜のエンジェル8」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、カリフォルニア州はロサンゼルスで、子孫であるチャンミンの車のナビを務めながら、真夜中のハイウェイをぶっとばしているところなのです!ちなみに後部座席では、二人の男が苦しんでいるところなのです!
「……チャンミン、なぜさっきのところで下りなかったのでしょうか?」
「……緊張してるみたいで。運転久しぶりだから」
チャンミンは心なしか青い顔で、ハンドルを両手で握って、肩を強張らせています。
僕はあまり刺激しないように横目でちらっと見て、また視線を前に向けます。
「次の分岐まで大分ありますね……」
「……ご先祖様。結構ちゃんと、ナビっていうか、こういう仕組み分かってるんですね」
「長く生きているので。いやもう天使なんですけど」
僕はウフフと笑いましたが、チャンミンは能面のような顔で前を見ています。
「……」
「ちゃ、チャンミン……それ独り言か……?」
後ろからマネージャーの力のない声が聞こえます。
「ええ、独り言です」
チャンミンがバックミラーで後ろを見ながら答えます。
「……そうか」
「チャンミンっ!来ましたよ!車線変更してください!」
「あ、待って下さい!ああっ!!」
「ああああ!!」
「ちゃ、チャンミン……独り言もだけど……大丈夫か……」
「ええ、問題ありません」
チャンミンが後ろでうな垂れているマネージャーに即座に答えました。
「チャンミンっ!次で下りないと本当に遠回りもいいとこですよ!!」
「分かってますから!!!」
「……お、おい……」
チャンミンと僕は、マネージャーを無視して道路標識を食い入るように見つめます。
「そこですっ!!チャンミン!!」
「分かってます!!!」
何とか高速道路を僕たちは下りることができました。
しかし、目的地から大分離れた上に、チャンミンは殺気立っています。
「……ねえ……チャンミン……運転してるの……?」
これはどうやらチャンミンの想い人、ユノ氏が意識を取り戻したようです。
「してますけど、大丈夫です!」
チャンミンがバックミラーを見ながら答えます。やはり想い人は更に気にかかるようで、ちらちらと見ています。
「チャンミンっ!そこ左ですよ!!!」
「え?どこ?」
「そこそこっ!!あああっ!!!」
「あああああっ!!!」
「……チャン……ミン……本当に大丈夫……?」
ユノ氏がぼそぼそと呟いています。
「余裕です!!」
チャンミンが声を張りました。僕は夜間のオレンジ色の電灯の中、車内で前のめりになりながら指をさします。
「チャンミン!!そこ左っ!!!」
「どこっ?」
「そこじゃないって!!」
「ああ??」
「チャンミン!!ここイッツ―だから!」
「ええっ?!あああっ!!」
「あああああっ!!」
僕たちの後ろから声が聞こえます。
「……マネージャー……俺もうダメかも。チャンミンが二人に見える……」
「……俺なんか、羽生えてるように見える……」
「チャンミン!!イッツ―!イッツ―だから!!!」
「あああああっ!?」
つづく