「眠れない夜のエンジェル11」ユノ×チャンミン
~~このお話は、真夜中に起きているあなたに贈る、真夜中のお話。
こんばんは、みなさん。
僕の名前はシム・チャンミン。
僕は、『眠れない人の悩みを聞くエンジェル』です。
今日も良い夜になりましたね。
僕は今、東京都は港区で子孫であるチャンミンを探しているところなのです!
この前のマンションかと思ったら違いました。
どうやら、この狭い路地裏から声が聞こえたようです。
あ!いました!
なぜか道端に不自然に置いてあるアルミ椅子に上半身をふせて座っていました!
「チャンミン!」
チャンミンが座ったまま、こちらを見ました。
「……来てくれたんですね」
何だかとても元気なさそうに見えます。
ま、まさか、ユノ氏に振られたのでは?!
僕の子孫は、同性の仕事仲間に恋をしているのです!
「ど、どうしましたか?チャンミン」
慌ててその傍に駆け寄ります。
「俺はもうダメです」
チャンミンが力なく微笑みました。
これは大変です!
「ちゃ、チャンミン、大丈夫ですよ!一回振られたからと言って諦めてはいけません!」
「……違います、ご先祖様。そっちはまだ、告白もできていません」
「あ、そうなんですか」
なんだ。
「では、どうしましたか?」
「風邪を……引きました」
「え、風邪を?」
チャンミンはつらそうに頷きました。
可哀想に。
熱も大分出ているようです。
「しかし、それは辛いとは思いますが、僕は風邪を治すことは出来ないのです、チャンミン」
「いつも、すごい気を付けてるんですけど、俺としたことが……」
チャンミンはうな垂れています。僕の話を聞いてないようです。
「風邪薬は飲みましたか?チャンミン」
「はい」
「では、早く帰って休んだ方が良くないですか?」
そもそも僕の子孫はこんな場所で何をしているのでしょうか。
「仕事中です」
「え」
僕は辺りを見廻しました。
アイドルと言うのは、こんな辺鄙な場所で椅子に座るのも仕事なのでしょうか。
「違います。この中で雑誌の撮影をしてたんです」
「なるほど」
流石子孫です。考えを読まれてしまいました。
「写真撮影が終わって、今からインタビューなんです。その前にあまりにも具合が悪いから、一人になりたいと言って出てきました」
「なるほど」
「なので、あとはよろしくお願いします」
「え?」
そう言ってチャンミンは僕に、二つに折った紙を渡しました。
僕はそれを受け取ります。
そして、チャンミンは、そのままぐらりと椅子から落ちる……ところを僕が抱きとめました!
えええええ!?
こ、これは一体!どういうことなのでしょう!
「ちゃ、ちゃ、チャンミン!しっかりして下さい!ど、どういうことですか!」
「……書いてある……通りに……」
目を閉じてしまったチャンミンを抱きとめながら、僕は片手でさっきの紙を開きます。
インタビューの解答のようです。
ま、まさか……
「チャンミン!しっかりして下さい」
「うーん」
脂汗をかいてうなされています。
とりあえず僕は、チャンミンを椅子から下ろし、後ろの飲み屋の看板にもたれさせました。
非常事態なので。
立ち上がって、もう一度紙を見直します。
やはりそうです。
これはどうやら、僕が代わりにチャンミンの仕事をしろと言っているようです。
僕は何でも屋ではないのです!
「うーん」
しかし、子孫の苦しんでいる顔を見てそんなことは言えません。
やるしかないようです。
「チャンミン、具合どう?」
呆然としていると、建物から出てきた人に声をかけられて、僕はそちらを見ました。
「あ」
「あ」
子孫の想い人、ユノ氏です。
つづく