「DOKI☆DOKI☆らぶ♡15~プリンセスがやってきた~」シウォン ユノ チャンミン キュヒョン ミノ ヒチョル
~~~~前回までのあらすじ~~~~
男子校に通っているシウォンはなんと女の子!とうとう文化祭当日がやってきた!!シウォンのクラスの前には番長が出しものをすることに!!☆「桃太郎役」で学園のアイドルのミノ、「おばあさん役」で『殺しのバンビ』のシム・チャンミン、「おじいさん役」で学級委員のキュヒョン、「村人役」で大好きなユノ先生と送る、「鬼役」シウォンのDOKI☆DOKI☆学園生活はどうなるのっ!?☆
「それでは次のクラスの準備が出来るまで、そのまま15分間お待ちください」
アナウンスと同時に体育館裏に運んでおいた小道具を、一斉に舞台袖の出口に一番近い場所に運びこむ。次のクラスの出し物が終わるまで、一旦そこに置いておくんだ。
「壊さないように気を付けて下さい。でも人手がないので迅速に」
おじいさんの姿をしたキュヒョンが桃を俺と一緒に運びながら言う。
「なあ、キュヒョン。これうちのだっけ?」
桃太郎の恰好をしたミノが茶色くて長い棒を持って聞いてきた。
「それは違います。それは2年C組の『たのしいムーミン一家』のです」
「おい、これはどうなんだよ?」
おばあさんのシム・チャンミンが良く分からない棒を持って聞いてきた。
「それは体育館の備品なので勝手に持って来てはいけません」
キュヒョンが片手を離して眼鏡を触った。
「何であいつらカメラ構えてんだよ」
薄暗い舞台袖の指定位置に木を置いて、シム・チャンミンが言う。隣に桃を置きながらキュヒョンが答えた。
「シンデレラは今回の目玉です。でもうちのクラスも撮られます」
ミノがいるもんね。
あっ、じゃあシウォンの鬼さんも撮られちゃうジャン!
やだっ!最っ悪っ!
「男撮ってどうすんだよ。マジきめーな」
「ミノ目当てに他校の女子も来てるヨ」
俺が言うと、斜め奥から話しかけられた。
「カメラ持って来てんのは殆ど男だ、可愛い子ちゃん」
思わず悲鳴を上げそうになって両手で口を塞ぐ。
薄暗い中で足を組んで椅子に座っている、番長がいた。
他の人がせっせと動いている中、背もたれに腕をかけて、悠々と座ってる。
すすけたワンピースにエプロンと三角巾姿で、汚してる顔は暗くて見にくいけど、女の子の恰好っ!
何で番長が女の子の恰好で、俺が鬼さんなのっ!シウォンが女の子なのにっ!
変なのっ!
少し首を傾げてこっちを見ている。
「ふーん。可愛い子ちゃん、赤鬼なんだ。良く似合ってるな」
「お前はオカマの役だな」
シム・チャンミンが口を出した。
こっちを向いたまま、にっこり笑った顔は分かった。
「この舞台終わったら覚えとけよ」
「うるせーよ」
シム・チャンミンの声と同時にアナウンスが入った。
「そこで見ててもいいぜ」
「いえ、次は河川敷です」
いつの間にか来ていたミノが爽やかに笑って俺の腕をひいた。
「それでは、3年D組『シンデレラ』を上演致します」
照明が全部落とされる。
あーあ。シウォンも女の子の役が良かったナ。
「ちょっと!シンデレラ、シンデレラはいるの!」
俺たちはステージ下の待機場所で座って舞台を鑑賞する。
「はい、お母さま!」
そう言って番長が出て来た
瞬間っ☆☆
パシャパシャパシャ!
な、なに!?
一斉にフラッシュがたかれて写真撮影が始まった!
ええっ!?こ、こんなに!?
「すげー。確かにオカマ入ってるけど、女みたいだな」
ミノが隣で呟いて、俺も舞台を見る。
あっ!ほんと!女の子みたいっ!
何でシウォンより女の子っぽいのっ!FU・SHI・GI!
「男に媚びて番長になったんじゃねーのか」
舞台の上で演じる番長を、白い目で見ながらアイツが言う。
「さあ、シンデレラ!最後の魔法だよ!!とっておきのドレスをご用意致しました!!」
魔法使いが声をかけると、黒子二人に、番長を隠すようにしていた布が取られる。
ふわふわのピンクのドレスを着たシンデレラ役の稲妻シンデレラがあらわれた!
「ヒ・チョ・ル・ちゃーん!!!」
「どうやら親衛隊もできているようです」
キュヒョンが言う。
「あれ生徒会長だな」
ミノが観客席を見た。
「わあ!素敵なドレス!ありがとう!」
番長がくるりと回って会場にウィンクすると、一層フラッシュがたかれた。
う、羨ましいんダカラっ!!
「俺たちは真面目にやって、あっと言わせようぜ」
ミノが言って、俺とキュヒョンが頷く。
「どうでもいーから、早く終われよ」
シム・チャンミンが肩を落として溜息をついた。
前のクラスが撤収していく中で、ステージに小道具を配置していく。
ちょっとドキドキしちゃうんだカラ!
シンデレラはすごかったけど、観客数はミノ効果で更に増えた。
「それでは、2年E組『桃太郎』を上映致します」
アナウンスと共に盛大な拍手が起こって、舞台の照明が点く。
ナレーションが入った。
「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがおりました」
木を背景に眼鏡を外したおじいさん役のキュヒョンとおばあさん役のシム・チャンミンが並んでいる。
よしよし。アイツちゃんと腰曲げてるネ。
「おじいさんは山へしばかりにおばあさんは川へ洗濯に――」
「可愛い子ちゃん、聞けよ」
「ふんおっ!!」
おじいさんとおばあさんが舞台袖のこっちを見た。慌ててステージのカーテンで隠す。
な、な、な。
後ろを振り向くと、ふわふわのドレスのシンデレラが、俺に向かってにっこり笑った。
わあ、お化粧もしてるし本当にかっわいー。
「俺も見ることにした。ここで」
「ええ!」
声に出さず言いながら横目で舞台を見ると、おじいさんが気を取り直すように、向こう側の舞台袖へはけて、おばあさんは面倒くさそうに洗濯物を洗いだしている。
「おばあさんが川へ洗濯をしていると、そこへ大きな桃が流れて来ました」
「どんぶらこっこすっこっこ」と言うナレーションと共に、底をくり抜いた桃にミノが入って、ずずっとおばあさんの前へ移動してる。
「動きがキモイんだよ。紐つけてこっちから引っ張れよ」
シンデレラが隣で言った。
「あの桃……中からおさえとかないとすぐ開いちゃう……から」
女の子みたいだけど、やっぱり恐くて声がうわずっちゃうよ!
やっと、おばあさんの前に来て、ちょっとイライラした顔のシム・チャンミンが、
「これは大きな桃だ。おじいさんと分けて食べましょう」
と、言うとナレーションがかかった。
「おばあさんはにこにこしながら桃を拾い上げると、家の中に運びました」
「あれどうやって運ぶんだよ。持ち上げられねーだろ」
「紐で……巻いて、引いていく感じにするんです」
でも、あれ?紐がない?
舞台の上に紐が見当たらずにおばあさんが焦りだした。
「どうすんだよ」
稲妻シンデレラが呟く。
おばあさんが小声で桃に話しかけて、紐がないまま、おばあさんの後を桃がずずっとついていった。
「あれじゃ、桃の妖怪じゃねーか。あんなの食わねーぞ」
番長が前髪をかき上げる。
ああん!せめて引く振りするか、押せば良かったのにっ!アイツ!
会場が少しざわめいた。
「夕方になって、おじいさんが山からしばを持って帰って来ました」
「おばあさん、今帰ったよ」
おじいさんが向こう側の舞台袖から戻ってきた。
「おや、お帰りなさい。いいものがあるんです。ほら見て下さい」
ござの真ん中に、自分で移動した桃を前にしておばあさんが言う。
あの中には袴を脱いで、白い着物だけになった産着姿のミノが入ってる。
「ほほう、これはこれはみごとな桃だねえ」
「川で拾ったんですよ」
「それはとても珍しい」
「では早速食べてみましょう」
「おばあさんが包丁をあてると、なんと、勝手にぱかっと桃が割れて、中からかわいらしい赤ん坊がでてきました」
ナレーションが入ったと同時に、
割れた桃から産着姿のミノが立ち上がった。
その瞬間っ☆☆
黄色い声援と共に、フラッシュで白くなった観客席に爽やかな緑のペンライトがついていく。
「なんだそれ」
番長が眉間を寄せて観客席を見た。
「ミノの親衛隊が作ったペンライトです」
恰好よく立ち上がった桃太郎が観客席に向かって笑顔で「おぎゃあおぎゃあ」と言った。
「演出どうなってんだよ」
「ここは先生が提案して……」
そしたらキュヒョンはすぐに採用しちゃって……シム・チャンミンがぶつぶつ言って……大変だったナ。
暗転になって、ミノが向こうの舞台袖で袴を着ている。
「へえ。あの変な恰好の先生がね?」
お化粧で更に強くなった切れ長の目が、こっちに向いた。
「あ……」
口の端を片側だけ上げて、面白そうに笑う。
「なあ、可愛い子ちゃん」
マスカラも綺麗につけて、唇もぴかぴかの顔がゆっくり近づいて言う。
「俺が何でここに来たか分かる?」
暗転が終わる。
「本当に行ってしまうのかい?桃太郎」
「はい、おとうさん。鬼を退治したら必ず戻ってきます」
「鬼が島はとても遠いところにあると聞きましたよ?桃太郎」
「心配しないで下さい。おかあさん」
舞台の上では、袴をはいて刀を腰に刺した桃太郎が、おじいさんと腰を曲げたおばあさんの前に立っている。
「可愛い子ちゃんに言おうと思って」
稲妻シンデレラの綺麗な指が俺の頬を撫でた。
に、逃げないと!
「アイツらは俺には勝てない」
触った指が顎を固定して、鋭い目が光った。
「でも本気でお前とキスしたいから、俺は本気でやる」
ダメっ!全部ダメっ!
でも心臓が・DO・KI・DO・KI・しちゃうヨ!
「じゃあ、立派に鬼を退治してくるんじゃよ、桃太郎」
「はい、おとうさん」
「ではこれを持っていきなさいね、桃太郎。これはね」
ああん、どうすればいいのっ!
「おっ、俺が好きなのはっ、ユノ先生です!」
「知ってる」
シンデレラがにっこりと微笑んだ。
「でもそれムカつくから、今キスするわ」
いきなり真顔になった稲妻シンデレラが俺の口に唇を押し当てようとした。
「だ、だめえっ!!」
俺は背中から倒れるように舞台に転がり込んだ。
「あ」
客席から声が漏れる。
「鬼、不意打ちすぎんだろ」
きびだんごを持ったおばあさんが俺に呟いた。
☆つづく☆