夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「麒麟15」キリン×リョウク


段々と日が傾いてきた。



「森の手前まで頑張ろうね」



スイカしか食べ物のなかった僕は、スイカを食べてもお腹が減っていた。


しかも苦い。


でも日が傾いてくれたおかげで、歩きやすくなった。


それに目標の場所が目で見えるから、歩く速度は少し上がった。


でも、ふと考えてしまう。


最終地点には、あとどのくらいで着くのだろう。



「明日は、どういう道のりなの?」



日よけをしなくていいと僕が言ったキリンが普通に隣を歩いている。



「森を抜けて、そこから夜まで歩けば人間の町に着くよ」



着きたいと思うのに、またぴりっと痛んだ。


「そっか」


キリンが僕を覗き込んだ。


「森の中にはちゃんと果物があるから、大丈夫」


「うん」


僕は微笑む。


この微笑みは人間にだって空腹のせいで、無理に笑っているって思われるくらいだって分かる。実際は違ったかもしれないけれど。


キリンも、そこまで考えて、何も言わずにまた首を上げたのかは分からない、けれど僕はそう思っていた。同じ感情を持った動物だって、もう僕は信じていた。


太陽が傾いている。


ジャングルが、すぐそこだった。沈もうとする太陽は、残り少ない時間を表しているようだった。


見たことがないほど大きな岩が、ジャングルの前にあった。


今日はその岩で休む。でもその岩を通り越して、僕たちはジャングルに向かった。


果物を取りに行こうとキリンが言ったから。


「ここに来る前にね」


段々と夕日に変わっていく太陽に照らされながら、僕はキリンに話していた。


「こんな心理テストをされたんだ」


今朝の夢を。酒をいっぱい飲みながら、言われたこと。その後を思い出して、言いたくなった。


「沢山の人といて、隣の人にね。もし、無人島で暮らすことになったら、あなたは誰を一緒に連れて行きますか?って」


キリンを見上げると僕を見下ろしていた。何となく言葉が詰まった。


「……これって誰でも一度は考えるようなやつだから」


でも、自分から言い出したことだから続けた。


「この心理テストの答えはすぐに分かったと思った」


だけど黒い目を見て、声はもっと出なくなった。


「多分答えは……それがあなたの好きな人。好きって言うのは、恋愛感情って言う感情の意味なんだけど」


「うん。分かるよ」


キリンの返事に、心臓が一度大きく打った。


それは、同じ感情を持っていると思いながら、知らないと思って僕が話してしまったことの罪悪感と、知っているのは、言葉だけでの意味なのか、分からなくて。


でもキリンが優しい顔で、それで?って、覗き込んだから、僕は、この先がもっと話し辛くなった気持ちを抱えながらも、言った。


「……僕は、そのテストを出した人が……ちょっとだけ好きだったから、その人の名前を出そうと思ったんだ」


こんな告白しか出来ないって思ったから。


そう言うと、優しい顔のまま「うん」と言われる。


その顔を見ながら、胸がとても苦しくなった。


「なんでかっていうと」


声が少し震えた。でも言いたかった。沈もうとする太陽が、僕をなぜか、早く言わないとと、急かしていた。


「その人は誰かとずっと一緒にいる約束をしたばかりの……僕と同じ、男の人だったから」


初めて、誰かに喋ったことで、こんなに胸が苦しくなっているんだろうと思った。


キリンは相変わらず、優しい顔のまま僕を見ている。


だから、この、誰にも言ったことがない内緒話をまだ続けることができた。


「でも言わなかった。だってそれは、本当の答えじゃなかったから。本当は僕ね、仲が良い人なら、誰でもいいと思ったんだ。僕はアイドルグループの一人なんだけど、グループのメンバーでもいい。でも……その答えも、言えなかった」


話に夢中で気づかなかったけれど、いつの間にか、僕たちはジャングルに入っていた。消えて行く太陽のせいで、周りは見えにくい。


そんな視界を気にしていないように、キリンは僕に向いている。


「僕とじゃ可哀想だと思ったんだ。体力もない、メンバーの中の誰かみたいに……すごく頭の回転が速い、面白い事を言い合える自信もない。それに……同じ性別の人が気になるせいで、女の子でも男の子でも、誰もいないとこで僕とずっと一緒なんて、可哀想だって思ったんだ」


それなら。


誰もいない場所で。


独りぼっちで過ごすことを。


僕は選択しないといけないのかもしれないって、思ったことを、僕は思い出した。


「でも、そしたら酷いんだよ。この答えはね、それはあなたが一番頼れる人だって。笑っちゃうよね、そんなの当たり前じゃん。でも、僕は……ああ当たってるなって思った。僕は頼れる人なんていないって、全部自分で……誰にも言わずに……頑張らなきゃいけないって思ったから……」


キリンが脚を止めた。


「リョウク。果物あったけど、取れる?」


僕は、その時、初めて気づいた。


自分が泣いていることじゃない。


キリンが、今日、何も食べていないことに。


涙は、更に酷くなって出た。


「ごめんなさいキリン。何も食べてなかったね」


「大丈夫。それよりリョウク、取らないと。夜になると危ないから」


そう言って、背中をさすられる。


危ないのは、僕だけなのに。


優しいキリン。


僕は初めてこんなに誰かに頼った。


でも人間じゃない。



人間じゃないけど、僕は、誰よりも、頼っている。








つづく

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