夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「Mi envulti vin en tiu profanda forsto.2」ユノ×チャンミン


最初の言葉は、神が創ったと言う。




殆ど文字の消えかけた、案内プレートを眺めた。




それから室内に目をやる。




息をそっと吐いて、足を進める。




腕時計を見た。




まだ昼前だ。




大丈夫。日没までには戻ろう。




でも唾を飲み込む。




昼前とは思えなかった。




暗い。




慎重に歩かないと転んだら、体を切りそうだ。




それくらい割れたガラスが散乱している。



少し見廻して、次へ行く。



もう殆ど中はもぬけの殻だから、丹念に見る必要はない。



だって僕が探しているのは、






人間だから。






大きな部屋に来た。




はめられた硝子はとうになくなっているスチール棚を見ると、どうやらカルテ室みたいだった。



自国語と、ドイツ語で書かれた背表紙の、ファイルが見える。




廃墟になってから、そんなに経ってないと思うけど。




虫が食ったようだった。




いもしない看護婦と医者がそこで働いている気がした。



大きなデスクの周りだけ一周して、足早に歩く。




本当に嫌だな。




二階へ進んだ。




一階は待合室や、大きな部屋ばかりだったけれど、二階から様相は変わる。




鉄パイプで仕切られている部屋が出て来た。




独居房みたいだ。




やはりここは、普通の病院ではないのが分かる。




でもあんな場所、出られないのだから入れもしない。



数人が寝られる部屋もあったけれど、大体が一人部屋のようになっている。



けれど中は、崩れたコンクリートの破片とゴミが散らかっているだけだ。



たまにスプリングむき出しのベッドが置いてあるところもあった。



酷いアンモニア臭がする。



鴉か、山鳩が所々に巣を作っている。



小さいけれど廊下に窓があって良かった。



なければこんな中、足元も見えないだろう。




三階に向かう。




大体が二階とほぼ変わらないけれど、更に独居房が増える。




どこも埃が充満している。




喉がひりひりと干からびている。



水が欲しい。



でもそれよりも先に、



一刻も早くここから出たい。



でも、そんなに大きな建物じゃない。



あと一階、あと一階だけだ。



三階を見終えて、



階段を上がる。



無限に続いているようだ。



こんなに長く感じるなんて。



そして上がりきる前に、




足がすくんだ。




殆ど、何も見えない。





この階、廊下に窓がない。




「死んだ人が出るよ」




誰かが言った。



手が震えてくる。



こんなの、ほとんど夜じゃないか。




「あの森に入ってはだめ」




度胸試しにでも来る人間以外は、踏み込むこともしない。



その奥にあるこれを、みんな知っていたから。



思わず、振り返る。





「振り返ってはだめ」




与太話が頭をちらつく。



でも、背後には吸い込まれそうな階段あるだけだ。



戻ろうか。



でも、もし、



僕が戻ったせいで、発見が遅れたら?



いないって分かってる。



警察も一度見たんだ。





でも、僕も見た。



この森に入った二人を。






まずここから。



だって僕を嘘つき呼ばわりした。



一人が、違う場所で発見されたからだ。



ちゃんと見てない可能性だってある。




でも僕は見たんだ。




入って行く彼と、




その後ろを歩く、



彼女を。



明日は森全体を見よう。




でも、まずここから。




すくんだ足を、一歩踏み出す。




ぱり。




硝子が割れた。




少し天井が崩れているところがある。




長居はできない。




部屋を見た。




どうやらこの階は、




全てが独居房だ。




でも良かった。




部屋には鉄パイプの小さな窓があった。



これで、中の様子は分かる。



こんな部屋、入れないんだから誰もいないよ。




廊下が暗すぎて、足で探りながら進む。




床ごと崩落したらこんなことも無意味だ。




やはり全部屋そうみたいだな。




でも、最後の部屋で、




足を止めた。




ここだけ二階の部屋のようだった。



窓は鉄パイプで小さいけれど、



この階を管理している人間が寝ていたのか、



下のよりはまだましな、汚らしいマットのベッドがあった。



机も。



でも、誰もいない。




けれど、目に止まった。




その机の上に。




この空間に、




凡そ似つかわしくない。




自分と同じ時点にあるのが分かる。




埃もかぶっていないものがあった。




真新しい日記帳のようなノートだった。




一刻も早くここから抜け出したい。



そう思いながらも、



その部屋に入った。




暗いけど、見えないほどじゃない。




手に取った。




表紙を、めくった。




思わず眉をひそめた。






最初の言葉は、






――神が創ったと言う。






だから作り変えてはいけないと。




だからその言葉は滅んだのだと。




でも、そうじゃない。




その言語が使われなかったのは、それが必要とされなかったからだ。




最初のページの文字を俺は読んだ。




それはとうに絶えた世界共通語。




その文字で書かれた、挨拶。





「こんにちは」





そう読んだ瞬間。




世界は暗闇に変わった。











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