「チャンミンくんの恋人23」ユノ×チャンミン
洗面所に持って来ていたつんつるてんのパジャマをユノは着た。
今日はハンカチがいいと言い出さなくて、そのまま殆ど会話もなく、Tシャツに下着姿の俺は「寝ますよ」とだけ言って布団についた。
朝早かったのと変な自覚で疲れた。
電気の消えた部屋でまだ寝ていないけれど、ユノは喋らない。俺も黙っていたけど、このまま寝るのは嫌だったから、一声かけた。
「おやすみ、ユノ」
「おやすみ」
すぐに返された。
デスクを見上げたけれど、ユノが顔を出すことはなかった。
そのうちに眠気が訪れて、寝た。
夜中。
何となく、目が覚めた。
深夜に目が覚めると、時々心細い気分になったりする。
でも、今はそれはなかった。
デスクの方を眺めながら、
昨晩の寝る前の自分達を思い出した。
新しい感覚に、お互い戸惑っているな、と思った。
それから、朝起きたら自分から話しかけよう、と思った。
まだ休暇は続いているし、ならせめて楽しく過ごしたい。
物理的な状況も、それに慣れないせいなのか形を変えた俺達の関係性も、どうしようが、どうにもならない。
でもすねたユノは、俺がどうにかすれば、どうにかなる。
そう思いながら、自分が起きた原因に気付いた。
暗い部屋で顔をしかめる。
「ユノ?」
小さく鼻をすする音が途切れた。
俺は上半身を起こす。
「なに?電気つけますよ?」
「つけるな」
そう言われても俺はつけた。
ベッドに腰掛けて覗き込んだ。
ユノを覆うフェイスタオルを摘まんで引っぺがした。
「やめろよっ!そういうのダメだろ!!」
ベッドでこちらに背けるように背中を丸めたユノが怒鳴った。
「泣いてるんですか?」
「泣いてるかよ!」
俺は後ろ頭に手をやりながら、溜息をついた。
「布団、返せ」
俺は手に取ったフェイスタオルを見下ろして、
そうか、これはもうユノには布団なのか、
と、思って悲しいような苦しいような、何とも言えない感情に襲われた。
「ユノ……」
ヒョン、と付け足しながら、久しぶりに自分がそう呼んだのに気付いた。
そしてなぜかユノがその呼び方を今はしてほしくないだろうとも思った。
それのせいかは分からないけれど、こらえるような声がユノから漏れた。
それから、
「返せって言ってるだろ、チャンミンっ!!」
亀のように手足を縮込ませて、うつぶせになったユノが更に怒鳴った。
力が込められている拳が、伏せられた顔の両脇にある。
俺のと垂直にベッドは置かれているから、俺は斜め後ろからそのユノに声をかけた。
「ユノ」
「ヒョンって呼べよっ!」
言葉が出なくなる。
少し前の、「すねたユノ」なんて思っていた自分の、浅はかさに頭をぶん殴られたような気分になった。
うう、ともう、泣き声を我慢しなくなったユノが、その大きさのせいで全身を俺の目にさらされている。
つづく