「不思議な夜に 最終回」キュヒョン×イトゥク
「でもヒョンだって興奮したでしょう?」
「あんなことされたらな」
と言って、自分の頬が染まるのが分かった。その俺の顔を見て、キュヒョンの表情から硬さが抜ける。
キュヒョンが言う。
「でも確かに、なんとなくそういう気はしてました。実はすごい心臓がどきどきするし」
「聞こえてたよ」
言って笑った。
お前が、提案してきた時も、どれだけ涼しい声であっけらかんとしてたって、あれだけ抱き締められてたら、その鼓動は十分伝わってくる。
まさか目も合わせられないほど、恋されちゃうとは思わなかったけど。
「大体ね、中身も外見もクリアしてるって分かったらいきつくところはそうだろ」
「はあ」
と、曖昧な返事をして、キュヒョンが再び思案して言う。
「そうか。俺はやっぱりヒョンを好きなのか」
そう言った後、ぼうっと何か考えているのかまた黙った。
表情に寂しさが出はじめる。
「でも俺の外見はクリアされてないから、どうにもならないですね」
と言って自虐的な笑みを浮かべた。
窓の隙間から、
はじまったばかりの冬の寒さが入り込んでくる。
でも室内はさっきの熱も相まって十分暖かい。
月明かりが差し込んでいるのに気付く。
どうやら今日の月も綺麗らしい。
そんなことを思いながら、俺はキュヒョンに言った。
「それがそうでもない」
俯き加減だった顔が上げられて、丸くなった目がこちらを見る。
俺は応えるようにゆっくり声を出した。
「お前の女装姿は、やっぱりなかったけど」
続きを待つキュヒョンがわずかに姿勢を伸ばす。
「俺に、『帰って来てくれて良かった』って嬉しそうに言う顔はアリだったらしい」
と言って、自らを追い込んだ自分に俺はまた頬を染めた。
夜の静寂が見守る中で、キュヒョンも色白な顔を赤らめながら、声を出す。
「じゃあ、中身も外見もクリアした二人はどうなるんですか?」
これは悪戯されてしまったように、変な夢を見た二人のお話。
「まあキスして……いい感じになってくっつくんじゃないの?」
と更に顔を熱くして俺は答える。
それを聞いて、真っ赤になったキュヒョンが、
「まあ、そうなっても」
不思議じゃないですね、
と嬉しそうに言って笑った。
『不思議な夜に』 おしまい