「チャンミンくんの恋人27」ユノ×チャンミン
目が覚めたら、デスクの上から虎が覗いていた。
「食べないで下さいよ」
と、声をかけたら、
「腹減ってるから分かんない」と言われた。
ビニール袋を持った虎をデスクチェアーに乗せて、ダイニングに移動する。
「暑くないですか?」
夏も始まるし。
「ちょっと」
頭は脱いで、うなじに垂れた虎の耳が揺れている。
「手洗いますよ」
「うん」
もう朝食の匂いがしているダイニングで、ソファーで雑誌を読んでいたマネージャーと合流する。
「ユノ、それ暑くないか」
「じゃあ、なんでこれを」
「珈琲入れますけど飲む?」
テーブルの上にいるユノと皿を出しているマネージャーに声をかける。
マネージャーは驚くほど、多くの食材を朝から使っていた。
殆どが出来合いのものだったけれど。
「ユノ、一口ずつ色んなものをな」
手まで着ぐるみが繋がっていたから、上半身脱いで上だけ道着を羽織ったユノが、卵焼きばかり食べようとしてマネージャーに止められた。
おかずが多いから、予め小さく切ったものを皿に並べて置こうとしたら、
「それは美味しくなさそう」と言うから、
各皿に乗っているおかずの周りをラップで手を巻いたユノがうろうろしながら少しずつ取って食べていた。
「ユノにもっと運動をさせようと思うんだ」
見たことない食卓風景に自然と箸を止めたマネージャーが、間で動くユノの様子を眼鏡を摘まんで眺めつつ言う。
「確かに、意識的にしないと運動不足にはなるかもしれないですね」
俺は食べながら、ユノがおかずを取るのを手伝った。
「栄養管理もこれまで以上に徹底させないと。ユノの顔が浮腫んでるのが気になったんだよ」
俺とユノが顔を見合わせた。
俺は、ユノが苺を一粒丸ごと抱えようとしていたのを見て眉を寄せた。
小さく俺が首を振ると、ユノは口を尖らせた。
「待て待て、切るから」
マネージャーが四分一、包丁で切った。
だから昨日運動していたのか。
「それでちょっと今日は考えたんだ」
珈琲を飲みながら、とうとう殆ど食べなかったマネージャーが言った。
俺も食べ終えて、デザートに苺を口に放り込んで聞いていた。
ユノはもう四分の一切ったのを食べ終えていた。
つづく