「チャンミンくんの恋人39」ユノ×チャンミン
疲れた疲れた、と言いながらも、宿舎につくと、抑えられていた仕事量を遅れて体が実感してきたのと、安堵感も相まって、すぐに全員が本調子になった。
「じゃあ、チャンミン。手伝ってくれる?」
「ビール飲みながら」
「出前取るか」
ローテーブルの上で、撮影監督に渡されたメイクセットを拡げた。それから今日、撮り終えた映像をDVDにコピーしたものをテレビで流す。
撮影監督に言われた。
ユノには、公表が決定するまでメイクをつけない。極秘事項からと言うより、不慮の事故を懸念して、小さい身体に接触する人間を増やさないと言う事だった。
アップは撮らないので、アイメイクは眉辺りの毛の処理だけで、それ以外、肌をカバーするメイクをユノ自身でして欲しいと言う事だった。目立って来たら髪の生え際のカラーリングもユノは自分でしなければいけない。
「肌綺麗になりましたね」
ソファーの上でビールを開けて、テレビ画面に呟く。比較対象がない画面のユノは体の大きさなんて分からなかった。
「そうか?」
パウダーケースに座って見ながら、ユノは両手で顔を触って照れた。
自分達は簡単なものならできるけれど、本格的にはいかない。手ほどきを母国語で書いてもらった用紙を二人で見ながら、小さく切り取ったスポンジや綿棒も用意したものの、ほぼユノの手でメイクをしていく。
「いいな、チャンミンはしてもらえて」
テーブルの上で自分と同じ位の大きさのスタンドミラーの前に立って、蓋を開いたドーランやパウダーの間で、ユノが呟く。
「どうかな」
最終的にはユノのメイク、俺がしている気がする。
「なんで?」
「こっち向いて」
ユノが鏡から俺に向く。ビールを噴き出した。
「それきっと番号違う」
「あ、そう?」
「まあ次行きましょう。筆でパウダー。やっぱり、俺がするのもありますね」
「チャンミン、眉のここんとこ抜いて」
画面を見てから、自分の顔を指差しながらユノが俺に向く。
「はいはい」
ピンセットどこだ。
「おー、ユノ、顔白いな」
つづく