「チャンミンくんの恋人41」ユノ×チャンミン
毎日はあるけれど、断った仕事のせいで、殺人的なスケジュールではない。だから自分達にとってはまるで休暇が続いているような日々で、すぐに慣れた。でも仕事は確実にあったからユノが浮腫むこともなかった。
「待て待て、切るから」
「学ラン汚れますよ」
苺を抱え込もうとした高校生姿のユノがテーブルの上で俺を見上げた。
「黒だから大丈夫かと思って」
俺が首を横に振ると、こちらを見ながらつまらなそうに戻した。
録音スタジオで、合成されたユノと自分が並んだモニターの映像を見ながらアフレコを入れる。
口の動きに合わせて喋ると、コントロームルームのミキサーの上に乗っていたユノが爆笑している。
「すいません。もう一回おねがいします」
ディレクターに言われてユノを睨みながらテイクを重ねて行く。やっとオッケーが出た。
「期待してますよ」
得意げな笑みを浮かべるユノと交代する。
「はい、オッケーです」
ワンテイクでオッケーを出したユノが、不機嫌な顔の俺を見ながらブースの中で腹を抱えて笑った。
「映画面白かったよな」
「そうですか?」
「ジャングルでバナナ食べるところが良かった」
「ええっあれ?本当気が合わないな」
ベッドの上でうつぶせになって雑誌をめくる。雑誌の上でターザン姿のユノがめくったページを戻す。
「読むの早いんだってチャンミン!」
「こんな広告のとこ読む必要ないでしょ!」
マネージャーがノックしてくる。
「おーい、出前来たぞー」
「どうですか?見た目にはいいと思いますが」
「大丈夫です」
中に着ている白いシャツは違うけど(俺は白いハイネックのニットだったから)、全く同じカーキ色の厚手のコートを着たユノが、そう撮影監督に返事してから、こちらを見上げた。
「ユノ、いいじゃないか」
頷いたマネージャーの隣で、俺は屈んでユノと目の高さを同じにした。
「その衣装、後で貰いましょう。冬用に」
用意されたテーブルの上でユノが近づいてきて、俺の顔の前で屈み込んで少し首を傾げた。
「チャンミンも貰えば?ペアルックだぞ」
「それは保留にしましょう」
屈んだままユノが笑った。
「じゃあ、ジャケットの写真からいくので、スタンバイお願いします」
次の日はユノのミニチュアセットにクリスマスツリーが用意される。
「俺の身長と殆ど同じだ」
今回も私服で使えそうな白い衣装を着たユノがセットの中で自分の横に置かれたツリーを見上げる。空調があるからこんな衣装も着れる。
「今回はユノさんの身長に合わせるので、チャンミンさんを合成します」
「何で勝ったみたいな顔してんですか」
ユノを見下ろして言う。
楽しそうに、足元に置いてあった小道具のプレゼントを持ち上げて、こちらを見上げる。
「俺の部屋にも冬はツリー置こう!」
「俺の部屋でもあるんで」
「じゃあ、俺も買うかな」
後ろでマネージャーが呟いて、「じゃあダイニングにも置こう!」と思いついたようにユノが言う。
「いやいや、それ終わったらどうするんですか」
木に違うの飾ろう、
違うのってなに、
と、言いながら今日の撮影も始まる。
つづく