「チャンミンくんの恋人42」ユノ×チャンミン
CDのジャケットも合成とは思えない出来に仕上がって、プロモーションビデオ撮影も終えた。
移動車の中で、誰彼ともなく歌い出した「ジングル・ベル」が熱唱に変わっていた。
明日の仕事は昼過ぎからで、明後日もそんな感じだ。
「今日は飲むか」
歌い終わったマネージャーが言った。
「日本のビールも、もう一通り飲みましたよね」
俺はにやにやしながら声をかける。
「俺ワインにする!」
そう叫んだユノのケージに、今日、撮影が終わって貰った小さなクリスマスツリーを持った腕を俺は乗せている。
「じゃあ、一足先にクリスマス気分でいいワインでも飲むか」
「早くないですか?今夏ですよ」
でも俺はにやにやしている。
「いいじゃん!このツリーでクリスマスパーティーすればいいじゃん!」
自分の持つツリーを見る。
「あんまりこれではクリスマス気分にならないけど」
「俺はなるの!」
ダイニングのテーブルに置いたツリーをユノが隣に立って嬉しそうに眺めた。
「お風呂先に入りましょう」
「その前に出前何にするか決めて行ってくれ」
いつもの風呂に入る。
「これ肌が綺麗になるハチミツ入りだって」
片手で洗面器を持ちながら、片手で湯を掬って匂いを嗅いだ。
甘い匂いがする。
「チャンミンは本当に肌綺麗だな」
ユノは気にせず気持ち良さそうに淵に両腕をかけてこちらを見ている。
「毛穴見えてるでしょ」
「俺見えてる?」
「見えてる」
「マジでー」とユノが笑った。
「うわ、本当にクリスマスっぽい」
並べられたフライドチキンやピザ、サラダを見て、Tシャツとハーフパンツ姿の俺は声を上げる。
バスローブ姿のユノもテーブルの上で盛り上げられたチキンに手を伸ばした。
「撮影も一段落ついたから、今日は食べていいぞ」
マネージャーがまずシャンパンからだ、と言って開けた。
二つのシャンパングラスに、薄黄色の液体が泡を出して注がれるのをユノが隣でうっとりと眺める。
俺のグラスからユノのコップに掬い入れる。
「じゃ、乾杯」
二人はグラスの柄に手を添えて、一人がコンコンとコップをそれにあてた。
コップで飲むとあんまり美味しくないと言うから、
フライドチキン片手に、ユノに向けてグラスを傾ける。
一生懸命口をつけてユノが飲もうとする。
「飲めた!」
「どっちが美味しかったですか?」
ユノが首を捻る。
「労力が……」
と言って椅子に座って、またコップで飲みだした。
「あ、いかん。ユノの服買うの忘れた」
ユノがマネージャーに向いて「ええっ!?」と声を上げる。
「じゃあ、俺これで行くんですか?」
自分が着ているバスローブを眺めている。
「ユノ。そういやナース……」
「これでいいです」
少し気落ちしたような顔でマネージャーが、
「朝、買って来るから大丈夫だ」
と、言った。
三人で赤ワイン二本とビールも飲んで、良い気分になりながら、歯を磨いて部屋に行く。
ベッドの頭に背凭れて、ハンカチに着替えたユノと俺の携帯電話で動画を見た。
「やっぱすごい恰好いいな」
俺の腹の上で、画面を覗き込んで酔いが醒めたようにユノが呟く。
「やばいね」
お互い好きなミュージシャンが出した新曲だ。
「俺もこんなPV出れるかな?」
ユノが俺を見上げた。
「出れるでしょ。もし公表が決まったら、もっとすごい特撮できるかもしれないし」
言いながら、ユノと見つめ合う。
お互い覚悟している。
そういう微笑みを浮かべていた。
「チャンミン!」
叫んでよじ登って来た。
「はいはい」
鼻で笑って俺は寝転がった。
ユノが口をつけてくる。
俺も酔っ払っているからか、唇をつきだしてやると、
顔にまとわりつかれながら更にキスされた。
「チャンミン、ちょっといいか?」
コンコンとノックされて、マネージャーの声がした。
つづく