夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「チャンミンくんの恋人55」ユノ×チャンミン


デスクの照明に照らされていた。



風呂上がりの身体から、ふき出した汗もクーラーですっかり引いた。

それどころかタンクトップとハーフパンツだと悪寒さえしそうだ。

この寒々しい部屋。

何が……違ったんだろう。

目を開けた俺を覗いたのが今のユノだと、何で嬉しさは「そこまで」だったのか。
あの頃と今との違いは何だ。


考える必要なんてない、明日帰国なんだから、と思うと、途端に襲ってくる悲しさに顔をしかめる。

座っていたベッドの上で片膝を立てた。その膝の上に片腕をのせながら今朝を思い出す。

明日は早朝の帰国で、今日も帰って来たのは日付を越えていた。


あの頃と、今のユノ。
違いは、
きっとこれしかなかった。



――恋人。



あれが恋人の関係かどうかは分からないけど、

じゃあ、俺は今恋人を望んでるんだ?

誰かと愛を確かめ合ったり、愛し合う行為をしたい?


それはユノとは考えられない。


だってこんな図体のでかい男同士で考えもつかない。
ユノが俺をどう思っていたかは知らないけど。
でもきっとユノもそれが難しいと分かっていたから、あの約束を自分から破ったんだ。

それに小さい相手となんて物理的な面で支え合いは難しい。

行為を言えばほぼ何も出来ないし欲だって湧かない、だからもっとそんな対象にはしにくい。

それであの頃も俺は考えては放棄してただろ。

でも俺はあのユノがいなくて寂しがっている。


じゃあ、恋人って何だ?


自分の部屋に、他人の部屋があったこのおかしな部屋、
おかしなデスクを見る。
全くその効果を発揮していない、温かな照明を見る。


……そんなもの、今更考えても仕方がない。


相方が今日言った。

友達。仕事仲間。

兄のような存在でもあったから俺達は家族でもあるのかもしれない。

二人の思いが今同じだから、この話は完結したんだ。

ぼんやりと見ていた照明の下に置いてあるものに視線を移動させた。

ベッドに上がったまま近寄る。

恋人が欲しいなら、作ろう。

この寒々しさから、正体不明の痛みから、解放してもらおう。

こんなにわけがわからないのははじめてなんだ。

こんなに苦しいのも。

丁度良い相手がいる。

誰かの部屋がなくなって、すっかり物のないデスクの上に置かれたそれに、手を伸ばした。

橙色の光の下で、指先を差し出すと、


思った通り、


俺の携帯電話に四つん這いになって話していた、


ハンカチを着た小さな面影が、こちらに気付いて立ち上がった。


眺めている俺に、にこっと笑って、大きな指を両手で掴んで頬ずりした。


消える。


空中で手を止めたまま、その場を見つめる。





恋人はきっと、――契約相手だ。





依存や、

束縛や、

自分の生活に侵入してくる権利を与えられる。

それは悪いことのようにも聞こえる。
でも俺は今、それを望んでいる。


深夜に突然起こしても良いような、


その姿を追い求めても許されるような、


肌を触れ合わせていられる、


寝る時も、起きる時も、そこにいることができるような。


そんな定義のような「権利」を持つことを、持ってくれることを望んでいる。


その相手はたった一人だけ。その契約を交わしたい人間は俺には一人だけ。

その定義を恋人と言うなら、

恋人が恋愛感情を持った相手と言うなら、

俺はきっと



……ユノが、好きなんだ。



突き抜ける胸の痛みと共に、誰もいない指の先を凝視する。
でも、俺はその契約を破棄した。
指を引っ込めながら、心臓が鳴り出す。
引き止めれば良かった。
この部屋を出て行った時、
俺の顔も見ず去ってしまう前に、
名前一つ呼べばよかった。
あの時に。
破棄した時に。
呆然と視界を見つめる。


だけど俺は……昨日のユノを思い出した。


ドアが開いた瞬間、湯上りのユノからまた香った甘い、匂い。
ユノはどういう意志であの香りを使う?
強い香りを好まないユノが、あの甘い匂いの入浴剤を使い続けるのは何で?
俺は、
思い出しては悲しくなったから。
それから、また一緒に使う時が来るかもしれないと、心のどこかで期待していたからかもしれない。
ユノは?
俺のことが好きだったなら、それは使いたくなくなるはずだ。
約束は破られたんだから、忘れようとするはずだ。
あの香りで思い出すはずだ。
何でユノは忘れようとしないのか。


聞けばいいだろ。


まだ側にいるんだから。

それから言えよ。

どうせ聞けばばれる、俺があれを過去にしたくないってことが。

そんなどうでもいいことにこだわっているのは何でか聞かれるだろう。

ユノは多分俺が嫌がって聞いてるわけじゃないって、俺の顔を見ただけで分かるよ。

そうしたら言えば良い。



今更だけど、考え直してほしいと。











つづく

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