「少し暗い日々の帳を抜けて3」ユノの短編 ウニョク キュヒョン
栗色の髪の毛で肌が白かった。
自分達は道路脇のガードレールに凭れかかっていた。
「新種だったらみんな捕まえに来るでしょ」
「俺、新種じゃないです。誰も捕まえられないだけで」
隣で正面を向いたまま。また少し面白くなさそうな顔でごくっと一口飲んでいる。人通りの少ない夏の夜、どこかでむしポケモンが鳴いている声がした。
「あ、そうなんだ。俺、あんまり知らないからごめんね」
キュヒョンが飲む手を止めて、俺に向いた。
「あなたはトレーナー?」
訝し気に見られながら、コーラを飲み干す。大分すっきりした。
「免許は、持ってるかな。じゃあそろそろ行くわ」
ガードレールから体を起こす。
キュヒョンはもたれた体勢のまま、上目遣いで俺を見た。
「……あなたは、俺を捕まえないんですか?」
瞳が大きくて、やっぱりピカチュウに似てるなと、ふと笑った。
「俺は、持ってるだけだから。今のところ、マスターも目指してない」
キュヒョンは俺を見つめただけで、何も言わなかった。
帰りがけ、あの自動販売機の方を見たけど、もう寝たのか、あいつはいなかった。
始発の電車に揺られながら、身をよじって、背後の青白くなった外を眺める。キュヒョンに言った自分の言葉を思い出していた。
「今のところか……」
俺は、心のどこかにそういう選択肢を作っていたんだろうか。
無意識に口から出た自分の台詞を、灯が消えた街並みに、繰り返していた。
帰ったら、布団を敷いて下着一枚のウニョクが寝ている。枕元に求人誌が拡げたままだった。そのページを見ると、パン屋のバイトだった。
そう言えば、こいつ結構パン好きだよな。
ポケモントレーナーは、ポケモンの行く末も考えてやらないといけないんだよな。
コンビニで買って来たソフトクリーム状になっているアイスを食べながら、パンも買って来てやれば良かったな、と思った。
シャワーを浴びて、ウニョクの隣に自分の布団を敷いて横たわる。こいつらは風呂に入らなくてもなぜかいつも綺麗だ。食い物も肉食のものや草食のもの様々だけど、ウニョクは本当は空気があれば生きていける。あいつもそうだろうか。今日会った、瞳の大きなポケモンを思い出していた。
「今日、ジム行ってくる」
テレビを見ていたウニョクが、台所でラーメンを口に運びながら言った俺に向いた。
「俺も行こうか?」
「どっちでも良いけど、お前良く行ってるから今日はいいんじゃない。俺顔出して、そのまま仕事行くから」
「そっか。分かった」
「うん」
食べ終わって、家を出た。駅に近い場所にポケモンジムがある。
エントランスをくぐり、入って直ぐに映し出されているモニターを見る。やっぱり二位か。
ここには、俺が捕まえた二匹目のポケモンがいる。余りにもわがままで、一緒に住むよりジムの方がいいだろうと、話し合った結果そうなった。ウニョクとも仲が良くて、まあいつかは一緒に暮らそうと思っている。
入れて三日でいきなり二位の実力になるほど強くなってびびったけど、その位置をずっと維持し続けている。
二階の個体で分けられた居住区にはいなくて、三階の共同施設にいた。他のポケモンたちと一緒にテレビを見ていた。
「ヒチョル」
『少し暗い日々の帳を抜けて3』おわり
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そろそろ「つづく」と書かないといけませんね。