「少し暗い日々の帳を抜けて7」ユノの短編 ウニョク キュヒョン ヒチョル
小学生の頃の夢を見た。
免許が取れる十歳になると、みんなポケモンを集め出して、誰もが「昨日~ゲットした」って話しているのが日常だった。
マスターを目指して、学校をやめる奴も出て来た。
俺はそんな中、みんなに合わせて免許だけは取ってみたけれど、何となく捕まえていなくて、いつも空のカプセル、「モンスターボール」を持ち歩くだけだった。
ある日、昼休みの校庭に、一匹のカイリューが迷い込んできた。
ドラゴンポケモンのカイリューは、免許を取りたての自分達には強くて、存在は知っていたけど見たこともない、手の届かないポケモンだった。
それが目の前に表れて、恐らくほぼ全校生徒が校庭に出て行った。
夢の中でも記憶と同じく、俺はその光景を教室のベランダから見ていた。
野生のカイリューは、沢山の子供に囲まれて、多分カイリュー自身も生まれたてだったのか大きかったけれど、怯えているように見えた。
それからそのポケモンは、勇敢な子供の一人がゲットしてカプセルに入れられていった。
寝ぼけながら、タオルケットにくるまって、目を閉じたまま思い出していた。
俺はあの時、カイリューが可哀想に見えたんだ。野生で生活できるのにポケモンが人に捕まえられてしまうのが。
そうか。だから俺は、マスターの道を目指さなかったのかもしれない。
目を開けて、起き上がった。
「おはよ、ユノ。やっと掃除機かけられるな」
ウニョクが横で掃除機をかけ出した。台所を見ると、食料を色々買って来ていた形跡があった。
「買い物行ってくれたんだ?」
「なに?なんか言った?」
スイッチを切ってウニョクがこっちを見た。
いや、何でもない、と首を振った。
『それでは、登場して頂きましょう』
駅前のスクランブル交差点で、顔を上げた。変わらない暑さだけど、少しだけ日は短くなってきているかもしれない。夕日は沈んで、辺りが薄暗くなっている。ビルに設置された大型ディスプレイに昨日マスターになったばかりの青年が映っていた。
『最初は恰好いいなってだけで目指し始めて』
信号が青に変わってみんなが交差点を渡っていく中、俺は顔を上げたまま渡らずに見ていた。
『でも、その過程で意味を見つけたっていうか。きっとそういうとこあると思うんですけど、多分一人一人違う目的があって、僕はそれを目指し出してから見つけましたね』
隣のアナウンサーが話し始めると同時に点滅し出した信号を渡った。
『このシム・チャンミンさんのすごいところは毎日会社に行きながら、マスターになったことなんです!』
電車は混んでいて、ドアに近い場所に立って、町を眺めた。
変わらないように見えて、少しずつ景色は変わって来ている。
でも窓に映る自分は、変わらないように見えた。
つづく