「少し暗い日々の帳を抜けて11」ユノの短編 ウニョク キュヒョン ヒチョル
すごい疲労だったけれど、眠れず考えていた。ぐうぐうと声を出して寝るウニョクの横で、俺は天井を眺めて、それから静かに外に出た。
アパートの周りを独りで歩いた。
伸びて来た黒髪を夏の夜風がそよそよと撫でた。
道端で眠っているマダツボミの横を通り過ぎて、適当なガードレールに腰をかけた。
街灯の下で、持って来た赤と白のカプセルを眺めた。
暫く眺めて、息を吸い込んだ。
朝になったら、ウニョクに謝らないといけない。
白けて行く景色と共に、家に帰る。まだ寝ているウニョクの隣で布団に潜り込む。少しだけ寝て、朝の光と共に目が覚めた。
「おはよ、ユノ」
何でそんなに掃除する必要があるのか分からないけれど、台所で掃除しているTシャツとハーフパンツのウニョクにそのまま起き上がって歩いた。
「あのさ、ウニョク」
雑巾片手に俺を見て首を傾げている。
「俺、マスターになる」
ウニョクが段々と口を開いて奥二重の目を丸くした。
それから、「マジ?」と言った。
俺は小刻みに頷く。
俺を眺めて、開いた口の端を上げて行く。
「それで、パン屋なんだけど」
俺は言いながら後ろ頭に手を置いた。ウニョクは何も言わず、伺うように見ている。でもその顔は怒ってはいない。
「えっと、パン屋は……」
置いた手で、そのまま後ろ頭を掻いた。
こちらを伺って、ウニョクが声を出した。
「お預け?」
「……ごめん」
雑巾が顔に飛んできた。
「きたねっ」
その後にウニョクが飛んできた。俺に抱きついて笑った。
「それでこそ俺のトレーナーだよ!ユノ!やろうぜ!」
「でもパン屋」
「だからさっさとマスターになってくれ」
なぜか喜んでいるみたいなウニョクを置いて、仕事に出かける。
俺の方も仕事をどうするか考えないといけない。殆ど寝ていないのに、体は昂っていて、問題なく夕方に作業を終えた。
その足でヒチョルの元に向かう。
つづく