「少し暗い日々の帳を抜けて12」ユノの短編 ウニョク キュヒョン ヒチョル
途中コンビニで、ビールを二缶買った。
ヒチョルはまた三階の共同施設でテレビを見ていた。
声をかけると、俺を見てにやりと笑って、隣のヤドンの柔らかそうなピンクの肩をまたぽんと叩いて、こちらに来た。
「ウニョクから聞いた?」
「何も聞いてねえよ。ずっと言いたそうにしてたけど」
ウニョク来たんだな。
「外行こうぜ」
ヒチョルがポケモンジムの駐車場に俺を連れて来た。
ブロックにしゃがみ込む。俺はその隣に立った。
「で、そのビールのわけを教えてくれんの?」
にやにやと笑いながら前髪を片側に寄せて正面を向いている。
駐車場の外には家路を急ぐ人や、夜の町を楽しもうとする人達、これから働きに出かける人達、様々な人とポケモンが行き交っている。
俺もそれを眺めながら、言った。
「俺、マスターになろうと思って」
返事がないから、隣にしゃがみ込んで顔を覗くと、ヒチョルもウニョクと同じ、笑顔だった。
そして俺に手のひらを見せた。
「さっさとビールくれよ」
ヒチョルに渡して、俺も缶を開けた。
「乾杯しよう」
そう言って俺の缶にぶつけた。
「まじい」
一口飲んで、顔色を変えず正面を向いたまま、ヒチョルがまた言った。少しぬるくなってはいたけれど、俺は美味しかった。
「俺は多分、人間とポケモンの関係に、ずっと疑問を持ってたんだ。でも人間として、困ったポケモンがいたら手を差し伸べられるようになりたいと思った。そのための一歩がマスターだって思ってる」
「聞いてねえよ」
ヒチョルが笑った。けどこちらを向いて、「でも、まあいいんじゃん?」と言った。
「それでさ、ヒチョル」
「ユノ」
大きくて鋭いけど、温かい目が俺を見た。
「明日の夜また来いよ」
そう言って、ヒチョルはまた行き交う生き物たちを眺め出した。
俺が何を頼みたかったのか、分かったらしい。
でもそれはとても難しいことだった。
だけどそれがないと俺達はその道を踏み出せない。
つづく