「少し暗い日々の帳を抜けて13」ユノの短編 ウニョク キュヒョン ヒチョル
帰ると、ウニョクがパンを焼いていた。
「ジム入る前に、練習しておかないと」
そう言って、焼き立てのバターロールが晩御飯になった。
「すごいな」
「作ってみて分かったけど、パン難しいわ」
ウニョクがそれから「ちょっと考えた方がいいかもな」と悩んでいた感じだったけど、一口ぱくっと口にして、「やっぱりパン屋にするかなあ」と呟いたから俺も食べてみる。
硬かったけど、確かに美味しかった。
疲労が凄くて、シャワーを浴びて泥のように眠った。
朝に、ウニョクに揺り動かされて起きた。
「ユノ、起きろ。ユノ」
なんだよ。疲れすぎていて、なかなか目が開けられない。でも仕方なく開けた。
「なに、ウニョク」
ウニョクは昨日焼いたパンをトーストしていたみたいだった。いい匂いが部屋にする。
「窓、窓」
「なに?」
横になったまま振り向く。
朝の光に透けた閉められたカーテンに、大きな影が映っている。
「おわっ」
飛び起きると同時に枕元の携帯電話が振動した。
大きな影は二階のこの部屋のすぐ外にいる。
とりあえず携帯電話を見ると、知らない番号が表示されていた。とってみた。
『もしもし、ユノさんですか?こちら、~駅のものです。先日は当駅のトラブルにご協力頂きまして有難うございました。実はあのカイリューですが』
俺は耳に携帯電話をあてながら、立ち上がって窓際に行く。そしてカーテンを開けた。
『トレーナーの方が放棄いたしまして、治療のために入院していたボランティア団体の病院も抜け出したそうで』
窓の外に、ばさばさと裏側が緑の翼を拡げて、大分元気そうな黄色いドラゴンがいた。俺を見ると一層ばさばさと元気よく翼を動かして飛んでいる。
『カプセルの中でユノさんの住所を聞いていたかもしれないと思いまして』
「……今来てます」
『あ、やっぱり』
窓を開けて、手を伸ばした。ずんぐりむっくりした体型の腹を撫でると、ぎょーと電子音みたいな声で鳴いた。
『研究所に送りますか?それなら紹介状を出しますので』
「いえ」
と言いながら、ウニョクに振り返ると、感動した目で窓の外を見ている。
「俺が……トレーナーになります」
つづく