夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「鶯 4」ユノ×キュヒョン


キュヒョンが、白い肌を上気させたまま、目を見開いて俺を見上げた。俺は眉間を寄せる。
緊張した瞳が向けられる。五月蠅い心臓の音が更に、と言うか嫌に響いた。



「ウグイスが、成仏するそうです」



「は?」



腕の中のキュヒョンを見下ろしながら、動きを止める。



「ユノさんのキスに愛情を感じたそうです」



荒かった息が段々と落ち着いて言われる。



「声も褒められたから言う事ないって」



「待て待て待て」



回していた手を離して起き上がる。キュヒョンも起き上がった。


「なに、本当に?」


キュヒョンが頷く。


「待てよ。ウグイスがいなくなったらそれこそ俺達どうなるんだ?」


難しい顔をしてキュヒョンが呟く。


「それなんですけど。俺はこれがウグイスのせいか分からないんです」


「でも、俺がこうなってるのはウグイスのせいだよな?」


じゃないと、こんなに男に鼻息荒くして、こいつのことばっかり考えてるのなんて説明つかない。


その男が横目でちらりと見てきた。



「それは違うと思います。俺の中にしかいないので」



「どういうこと?」



「ウグイスは、ユノさんに何もしていないと言っています」



「言っていますって……」



何だそれ。



「何だそのウグイス」



「つまり、ユノさんのは関係ないみたいです」



「ちょっと待て。じゃあ、俺がこんなにキュヒョンを好きになってるのはウグイスのせいじゃないってこと?」



キュヒョンの白い顔が真っ赤になった。
だって、これは恋愛感情しか考えつかない。
でもこいつのは鶯で、俺のは自前だとすれば、俺だけが好きになってるかもしれないってことか?
いや、それよりも俺今堂々と告白したな。いや、それは同じ気持ちだと思ってたからで。


「まだ同じなんで大丈夫です」


キュヒョンが真っ赤な顔で答える。



「なあ、俺ってそんなに顔に出やすいの?それともそれもウグイスのせい?」



「いえ、ユノさんが顔に出やすいだけです。ウグイスは何もしていないと言っています」



「言っていますって……じゃあ、まだ俺とキスしたい?」



キュヒョンがのぼせたような顔で、視線を泳がせてから数度頷いた。
ベッドの真ん中に座った体勢で、我慢できず、栗色の髪の後ろ頭を掴んで、引き寄せて唇を押し当てる。それを返しながらもキュヒョンが「ちょ、ちょ」と声を漏らして、制した。


「ウグイスの……話が終わってないです」


言われて、顔に距離を開ける。
手の中の、まだ赤いけど色の白い、声の良い男を見る。
俺は息をついた。


どうやらこの珍事と、この奇妙な同性との恋愛は、短かったけど、ここで終わりらしい。


「まだいる?」


「います。俺が引き止めてます。俺も考えてて、自分の中からいなくなったらこの気持ちはどうなるんだろうって。やっぱり同化してるところはあるみたいで」


目と鼻の先で上目遣いに俺を伺う。
確かに、相手の心情は顔に出やすいよな。
キュヒョンから手を離すと、大きな瞳の目が瞬いた。瞬きながら続けた。


「……だから、もう少し待ってもらおうと思って」


「今だと明日もコンサートあるし、気まずいもんな」


俺の言葉にキュヒョンが口を閉じた。


ベッドに座ったまま、相手の姿を一瞥する。もう何回目か忘れたけど自分達は見つめ合った。どこから俺は目が離せなくなったんだろうな。まあ、これからは最初から見なければ良いだけだけど。


「でも、キュヒョン、引き止めるのはやめろよ。コンサートが終わる前に成仏してもらった方が良い。次に会う時、気まずくなるより、これまで通りになってから離れよう」


大きな瞳の目が丸くなる。柔らかかった唇が開く。


「あの」


「キュヒョン、だけど、この瞬間じゃなくて、これから部屋に帰ってからにして欲しい。短かったけど、目の前で変わるのを見るのはきつい」


その体とも距離を開けながら、ベッドから立ち上がる。


「待って下さい。それもあるんですけど、それだけじゃなくて、俺も今はユノさんと同じなんで、俺からこの気持ちがなくなって、ユノさんが悲しくなるのが嫌なんです」



「キュヒョン」



掌を差し出す。



「いいから気にすんな」



差し出した掌の向きを変えると、それに促されるまま、キュヒョンも途惑いながらベッドから下りた。視線でも誘導して部屋の入口に一緒に歩く。呆然と俺の後ろをついて来る。ドアの前で二人で立ち止まった。



「じゃあ、明日はチャンミンの相方として、全部忘れて接して」



キュヒョンが眉を下げた顔を上げた。



「俺だって今も好きなんですよ?」



「分かってるよ」



小さく溜息を吐きながら微笑みかける。
でも、そこまで仲が良いわけでもなかった男の俺を、鶯なく好きになってるとは思えない。
俺を眺めてキュヒョンが顔を歪ませる。



「俺はまだこのままでも良いです」



「早い方が良いし、男同士でこんなことになってる方が大変だよ」



腕を伸ばしてドアのロックを解除した。ドアノブを掴む。
最後にもう一度その顔を見た。やっぱり丸くて大きい瞳だな。
少しだけ低い位置からまだ呆然と俺を見ている。



「何でキュヒョンが選ばれたのか分かったよ」



見ている相手に向かって、俺は自分の喉を軽くとんとんと指さして、離したノブにまた手をかけた。



「俺のこと好きになってくれてありがと。良い声してた」



丸い瞳が震える。



「……それは、どっちに言ってるんですか?」



「ウグイスにだよ」



笑って、ドアを開ける。もう一方にはこんな短期間で失恋させられて手放しに礼は言えない。静かな廊下が現れる。
キュヒョンもそれを見て、出ようとせずに振り向いた。



「ユノヒョン」



やっぱり俺はこいつに惚れてるな。心臓が五月蠅いまま治まらない。不思議な事もあるもんだって、それはもう全部なんだけど。



「俺の話、全部信じてますか?」



泣きそうな顔を見つめる。
俺から目を離さない、表情を見る。
鼻で笑って、その肩を押した。



「信じてなかったら、こんなことになってない」



押し出されたキュヒョンが俺に振り向く。元から上がっている口角が安堵したように上がっていた。



「じゃあ、おやすみ」



廊下に立って、閉めないで欲しそうに見ている、相方の親友を、ドアを閉めて視界から消した。













つづく

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