夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「カルチ」(病三種2)チャンミン ユノ


訝しく寄せられた眉間を一瞥したあと、さっさと刺身の乗ったサラダを取り分けて、皿をその前に投げ出した。外観だけは高級感のある黒いテーブルはその摩擦だけで剥げてぼろが出そうだった。無駄に暗くした照明はそのためか、と思いながら返事をする余裕がなかった。
何も答えず、次に自分に取り分けて、隣のテーブルに戻る。酒の入った人間達は何のためにチャンミンが動いたのかも全く気にはしていなかった。ぱきっと割り箸を離したものの、手はそこで止まった。
これはもう細胞が変異したとしか考えられない。
厚めに捌かれた白身魚の刺身の、綺麗に梳けている様子を見ると、自分の体内がいかに違うかと目の当たりにした気分になった。
先ほど自分が取り分けたもう一方の皿を横目で見る。同じく手を付けられていなかったけれど、あちらは見向きもされていないようだった。


暴れまわっている苛立ちがそのまま体内の病変を取り去ってくれないだろうか。


話し込んでいる相手より、優位にするわけにはいかない。あの眉が寄せられた理由は明らかだった。自分達の根幹を、それが当たり前の付き合いの長さとビジネスライクな関係がいつの間にか取って代わった。そんな明快なものが受け入れられなくなったことが一つと、分かって抑えられなかった自身に一つ。
苛立ちが、混沌として更なる苛立ちを巻き込んでいく。
二人だけのアイドルグループで上手くいってきたのに。
なのに、生活は一変する。他愛もない想像が悪性の芽を出した。その途端、病は全身に拡がって、気が付けば、深刻な状況に陥っている。
何も知らない相手が、体内を掻き回している。もう特効薬はない。


「チャンミン」


突然名前を呼ばれて、チャンミンは、箸を掴んだままそちらを見た。気遣ってすぐその隣が席を空けた。相手が思いもよらぬのが功を奏して、板についた作り物の冷静を装ってまかり通る。
話に加わりながらも、この先を考える。峠を乗り切るにはあとどれくらいの痛みが必要なのだろう。はたから見れば何の問題もないその側の半身はすでに、感覚がない。見慣れた長い指が、テーブルをうろつく度に、意識が混濁する。何もかもが断念される。自分と同じ、男の、手がうろついて、体中に巣喰った腫瘍を優しく撫でまわしている。チャンミンは眺めている。
それが、箸を取った。透明な魚が摘まれた。


「ありがと」


囁かれた。
もう見え始めた症状を、薄れて行く理性で体感している。
痛みはそろそろ感じなくなって来た。













『カルチ』

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