ミノ子の憂鬱32 ユノ×ミノ
「ス保、手こずるわよ。きっと」
チャ美、楽しそうね。
「……ス保さんに迫られたら、彼なんかすぐ好きになっちゃうんじゃないの?」
「あれは頭使っても落ちないわ。外見と純粋さに惹かれるタイプよ。そういう人には私達のあだ名が邪魔になる。……だから短期戦で盲目的になるほど惚れこませるしかないけど、かなり難しいわね」
じゃあユノ課長は?
受付の子のどこを好きになったのよ!
って、 違うわ。
ちょっと聞いてみたいけど、今は課長の話じゃない。
「それは演技とかするんでしょ?あなた達ならどうにでも」
私はそんな機会さえなかったけど。
「そんなの見破るくらいの男じゃないと、相手にもしないわよ。あのタイプは無意識に見破るわ」
そんな大変な思いまでして……
「あの人にそこまで頑張るかしら?」
あんなボサボサの人に。
あれ?
あの人唐揚げも買ってる。
いいわねえ。
近所のスーパー唐揚げの衣が厚いのよ。
あれはダメ。 唐揚げを求める人間がどれだけ肉を食べたいか分かってるのかしら。
あれは唐揚げの欲に水を差す行為よ。
私はあんなんじゃ誤魔化されない。
だからそういう時はフライドチキンね。
間違いはないわ。
でもフライドチキンはスーパーに置いてる時と置いてない時がある。
あれは何で?気分?
あれ?チャ美も良く見たら袋に唐揚げ入ってるじゃない。
みんな好きねえ。
揚げ物と肉が食べたい時の気分には人は逆らえないんだわ。
もう。私も夜食べましょ。
「頑張るかどうかもス保が決めることだけど、人の好みを甘く見たらダメよ。誰かにとってはみんな唯一無二になる可能性はあるわ」
チャ美……
「それに、簡単に成立しない恋もいいもんよ。じゃ、私早くこれ食べたいから」
「あ……ええ」
「送別会で少しは話ししなさいよ」
「なによ、知ってるの?」
あ、行っちゃった。
あのカップ麺何であんなに沢山入ってるのか聞き忘れたわ。
まさかあれ全部食べないわよね。
五個くらい……
入ってたわよ……
つづく