ミノ子の憂鬱34 ユノ×ミノ
「ミノ子ちゃんで合ってるよな?……すごい偶然だな」
ヒチョ男さんよ!!
「今、帰り?」
「え……ええ」
さっきの顏見られたかしら。油断大敵ね。帰るまでが遠足と同じよ。
「そっか」
「……ヒチョ男さんは?」
何で黙るのよ。
っていうか、歩く方向一緒なの?
「あの……」
「あ、悪い。俺、あそこのビルに用事あんだよ」
俺?
ヒチョ男じゃないの?
ん?そう言えば徒歩?マイカーは?
「あの、今日マイカーは?」
「は?」
ちょっと!こんな往来で大爆笑しないでよ!
なんなの!この人!
「わりー、わりー。マイカーね。できるだけ着くの遅くさせたくて、歩いてんの。車トラブルってことにしてさ。歩くの嫌いじゃないし、電車も使う」
「はあ」
「そういや、ミノ彦と会った?」
「え」
ダメよ。こんなので、挙動不審になっちゃ。
ミノ彦さんが何考えてるのかまだ分からないし。私達何もないんだから。
「あ……朝に挨拶くらいわ」
何でこの人にやにやしてんのよ。アイドルみたいな顔してるけど笑うと歯茎出るのね。
愛嬌あるわ。
「あいつも難儀してんな」
「え」
「ミノ子ちゃん。好きな男いるだろ?」
「えっええっ!」
ちょっと!今わたし、挙動不審だわ!しっかりしなさいよ!
「そ、そんなことは言う必要ありませんから!」
この対応、ばればれだわ!
ヒチョ男さん笑ってるし。
「そうかそうか」
「そうかって、わたしまだ何も言ってません。そういうヒチョ男さんは?」
「笑い疲れたな」
聞きなさいよ!
「俺は、年貢の納め時ってやつ」
ん?どういうこと?結婚?
彼女いたのかしら?
「そこのビルの社長令嬢と近々見合いすんの」
「えっ!」
この会社結構大きいじゃない!
何で私と話す人は、私を驚かせることが多いのよ。寿命が縮むのよ!
「俺のはもう決まってたことだから。ついに来たかって感じだよ」
「そういうの……本当にあるの……」
ドラマの中だけかと思ってた。
地上波、全然見ないけど。
そう言えば、ウォーキング・デッド、シーズン3どうなるのかしら?
大体あれ人が死に過ぎなのよ。
あの調子でいくと、シーズン4あたりからみんなゾンビになった話になるじゃない。
それでシーズン7まで行ったら新しすぎてついていけないわ。
って、お見合いの話よ。
ヒチョ男さんまた笑ってるし。
「本当にあるらしいな。まあ、救いなのはすごい美人ってことだけど。マジでそこは感謝だ」
「そんな……」
もしかしたら私は、そういう方がいいかもしれないけど。この人はそんなことなさそう。
いいえ!私だってユノ課長以外考えられないわよ。
だからお見合いはNO。
でもユノ課長は恐らく一回も私のことなんか考えたことないんだけど。
知っているのかどうかさえ怪しいレベル。
「じゃあ。『マイカー』で送れなくて悪いな」
「いえ。良い方だといいですね」
「みんな同じだから問題ない。ありがと」
今、気づいたわ。後ろにこの人ボディガードいるじゃない。
驚きね。
「……じゃあ、失礼します」
本当に世界が違うんだわ。
「ミノ子ちゃん」
夜の町で振り返るって、ドラマみたい。
何となくネオンに消えそうだわ。この人色白なのね。
「ミノ子ちゃん。頑張れる相手なら、本気出した方が良い。折角そういう恋ができるんだから」
「それは……」
あ、行っちゃった。
すごい高そうなスーツだった。
ミノ子ちゃんか。
「ちゃん」づけなんていつぶりかしら。
あの人。
かなりまともな人だった……
つづく