夢の続き

東方神起、SUPERJUNIOR、EXO、SHINeeなどのBL。
カテゴリーで読むと楽です。只今不思議期。

「First dreams2」ミノ×テミン


つまらない夢だ、とテミンは思った。



先ほどまで、真夏の入道雲の上に浮かんでいるようだった白い視界は、いつのまにか落ちて行く太陽のせいで、濃い桃色に変わっている。
これから飛行機は、あの中に傾いて行く。もこもこした雲は綿あめのようだった。自分がピンク色の綿あめの中に飛び込む錯覚を、テミンはした。


厚い硝子の窓の外を見ながら、こんな仕事を夢見ていた幼い頃の自分を少しだけ思い出した。毎日、この景色を見る、そんなそれを。
仕事自体も、高度な専門知識を要するだろうこと以外、誰かの創ったありきたりな姿しか想像つかないほどかけ離れた職業を今の自分が選択したことから、どんなものか、そうなった自分はどうだったか興味深くはあったけれど、はっきり言って、つまらないと思った。
窓に反射した、黒髪の、鼻筋も通った大人の顏は、まだどちらかと言えば「可愛い」と言われてしまうけれど、人から散々言われていたあの幼い頃みたいな可愛らしさはないと思う、その自分の、背後で目を瞑って静かに寝ている、手足の良く伸びたすらりとした人物に、巡り合えないからだった。だから、どんな夢も、つまらないとテミンは思った。


将来に向き合った時に選択したこの夢に向かって、今の自分がどれだけ努力をしたかとか、そう言うものもある。
だけど、恋心は強くて、目はもう、窓の外も見ていない、窓に反射している同性の、たった一人のその男を見ていた。
練習生の頃より向こうもずっと大人になって、メンバーの中で弟分の自分達の面影は、外見には薄れた。
でも、寝顔は、昔を思い出す。
テミンはきらびやかな衣装ではなく、シンプルな私服で、眉も下がって眠るあどけない寝顔を、窓の中にじっと見つめた。普段は自分の方が言われやすいけれど、自分よりもずっと可愛いと笑みを浮かべた。でも、その背の高さも、端正に見える佇まい、凛々しさ、自分の欲しかったものがそこにあることは認めている。羨ましさ半分、もし自分が同じものを持っていたら、こんな関係にはならなかったかもしれないと言う寂しさ、そしてまた、つまらなさを、テミンは覚えた。

隣でも距離のある広い座席のせいか、赤の他人のように少しその姿を眺めて、やはり自覚する気持ちに、じゃあ、仕様がないんだと、浮かべている微笑みには寂しさが出た。
見ていた目が開いた。
飛行機が入り込んだピンクの中で目が合った。



「寝ないの?」



ただ、呟かれる。現在ツアーの真っ最中で、寝る間は限られていた。テミン以外のメンバーは全員が、夕方にも関わらず眠っていた。
テミンは振り返って、相手に顔を寄せた。まだ少し寝ぼけながらも、相手はそのまま耳を向けて来る。



「ミノ、小さい頃の夢って何だっけ?」



目蓋の厚さは似ているけれど、テミンとは違う白目のはっきりとした垂れた目が見た。
少し悪戯っぽく笑ったテミンに、苦笑して、



「言わなかった?」



と、言った。
テミンはその答えをインタビューでも聞いていたのに、忘れてしまっていた。でも別に、そんなことで怒る相手ではないし、今聞きたかった。
首を伸ばしている自分の耳元に、口を近づけられた。
微笑みながら、テミンは何だったかな?と想像して聞く。



「テミンのお嫁さん」



ええ、とちょっとの気持ち悪さと驚きと、それ以上の沢山の楽しさにテミンは噴出して笑った。



「じゃあ、もうちょっと寝るから」



笑っている自分に続けて囁いて、その目を閉じていくミノに、テミンは「おやすみ」と、姿勢を戻した。
寂しさも、つまらなさも、楽しさに変わっていた。
性の壁を乗り越えてしまったのが偶然だったのか、それほどの相手だったのかは分からないけれど、今自分を楽しくさせるのは、この相手なんだとテミンはまだ笑っている。
そして、自分も寝ようと目蓋を閉じながら、この恋人の「旦那さん」と言う夢は、つまらなくはないなと思った。










『First dreams2』テミン×ミノ





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